この記事は、これから年金について知りたい方や、将来の老後資金に不安を感じている方に向けて書かれています。
公的年金の仕組みや種類、受給額の目安、受給開始年齢、保険料の納付方法など、基本からわかりやすく解説します。
年金制度の全体像を理解し、安心して老後を迎えるための知識を身につけましょう。
公的年金とは?
老後の生活を支える国の制度
公的年金は、老後の生活を経済的に支えるために国が運営している社会保障制度です。
現役時代に保険料を納めることで、退職後や高齢になった際に年金として給付を受けることができます。
また、老後だけでなく、障害を負った場合や家族を亡くした場合にも給付があるため、人生のさまざまなリスクに備える役割も果たしています。
公的年金は、すべての国民が安心して暮らせる社会を実現するための基盤となっています。
- 老後の生活費を支える
- 障害や遺族にも給付がある
- 国が運営する社会保障制度
社会保険制度の一部としての年金
公的年金は、医療保険や介護保険などと並ぶ社会保険制度の一部です。
社会全体でリスクを分担し、困ったときに助け合う仕組みとして設計されています。
現役世代が納める保険料を、今の高齢者世代への給付に充てる「賦課方式」を採用しており、世代間の支え合いが特徴です。
このため、少子高齢化が進む現代においても、制度の持続性が重要な課題となっています。
- 社会保険の一部
- 賦課方式で運営
- 世代間の支え合い
すべての国民が対象になる仕組み
日本の公的年金制度は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入することが義務付けられています。
自営業者や学生、会社員、公務員など、職業や立場に関係なく、誰もが何らかの年金制度に加入しています。
これにより、国民全体でリスクを分散し、誰もが最低限の生活を保障される仕組みとなっています。
未加入や未納があると将来の受給額に影響するため、加入状況の確認が大切です。
- 20歳以上60歳未満が対象
- 職業・立場を問わず加入
- 未納は将来の受給に影響
公的年金の種類
国民年金(基礎年金)
国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「基礎」となる年金制度です。
自営業者や学生、無職の方など、会社員や公務員以外の方が主に対象となります。
保険料は定額で、納付期間や免除制度も設けられています。
将来受け取る年金額は、納付した期間や免除の有無によって変わります。
老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金も含まれています。
- 20歳以上60歳未満が対象
- 保険料は定額
- 老齢・障害・遺族年金がある
厚生年金
厚生年金は、会社員や公務員など、企業や団体に勤めている人が加入する年金制度です。
国民年金の上に「2階建て」として設けられており、保険料は給与に応じて決まります。
将来受け取る年金額も、加入期間や収入額によって大きく異なります。
また、配偶者が専業主婦(主夫)の場合、一定の条件を満たせば配偶者も年金の対象となります。
老齢年金のほか、障害年金や遺族年金も給付されます。
- 会社員・公務員が対象
- 保険料は給与比例
- 2階建て構造
共済年金(現在は厚生年金に統合)
かつては公務員や教職員などが加入する共済年金が存在していましたが、2015年10月に厚生年金に統合されました。
これにより、民間企業の会社員と公務員の年金制度が一本化され、より公平な制度運営が図られています。
現在は、共済年金の加入期間も厚生年金の一部として扱われ、年金額の計算にも反映されます。
過去に共済年金に加入していた方も、将来の年金受給に影響はありません。
- 2015年に厚生年金へ統合
- 公務員・教職員が対象だった
- 現在は厚生年金の一部
年金の種類 | 対象者 | 保険料 | 特徴 |
---|---|---|---|
国民年金 | 自営業・学生・無職 | 定額 | 基礎年金 |
厚生年金 | 会社員・公務員 | 給与比例 | 2階建て |
共済年金 | 公務員・教職員 | 給与比例 | 現在は厚生年金に統合 |
公的年金で受け取れる給付
老齢年金
老齢年金は、一定の年齢に達したときに受け取ることができる年金です。
国民年金に加入していた場合は「老齢基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「老齢厚生年金」として支給されます。
受給には原則として10年以上の加入期間が必要です。
受給額は納付期間や収入、加入していた年金の種類によって異なります。
老後の生活資金の柱となるため、将来の受給額を早めに確認しておくことが大切です。
- 老齢基礎年金(国民年金)
- 老齢厚生年金(厚生年金)
- 受給には10年以上の加入が必要
>>老齢年金とは?国民年金・厚生年金の違いと受給額・開始年齢をわかりやすく解説
障害年金
障害年金は、病気やけがで障害を負った場合に支給される年金です。
障害の程度や等級によって受給額が異なり、生活の支えとなります。
国民年金加入者には「障害基礎年金」、厚生年金加入者には「障害厚生年金」が支給されます。
障害年金は、障害の状態が続く限り受給できるため、長期的なサポートが期待できます。
申請には医師の診断書や一定の保険料納付要件が必要です。
- 障害基礎年金(国民年金)
- 障害厚生年金(厚生年金)
- 障害等級により金額が異なる
>>障害年金とは?受給条件・等級・支給額・申請手続きをわかりやすく解説
遺族年金
遺族年金は、家計を支えていた方が亡くなった場合に、残された家族に支給される年金です。
国民年金加入者の遺族には「遺族基礎年金」、厚生年金加入者の遺族には「遺族厚生年金」が支給されます。
主に子どものいる配偶者や子どもが対象となり、生活の安定を図るための重要な制度です。
受給には被保険者の保険料納付要件や、遺族の年齢・家族構成などの条件があります。
- 遺族基礎年金(国民年金)
- 遺族厚生年金(厚生年金)
- 主に子どものいる配偶者や子どもが対象
>>遺族年金とは?受給条件・対象者・支給額・手続きをわかりやすく解説
給付の種類 | 対象者 | 主な内容 |
---|---|---|
老齢年金 | 高齢者 | 老後の生活資金 |
障害年金 | 障害者 | 障害による生活支援 |
遺族年金 | 遺族 | 家計を支えていた人の死亡時 |
公的年金はいくらもらえる?
平均受給額の目安
公的年金の受給額は、加入していた年金の種類や期間、納付状況によって異なります。
令和7年度(2025年度)の老齢基礎年金(満額)は年額約81.6万円(月額約6.8万円)です。
厚生年金の平均受給額は、男女全体で月額約14.5万円、男性で約16.9万円、女性で約10.4万円程度となっています。
ただし、これはあくまで平均値であり、個々の状況によって大きく変動します。
将来の生活設計の参考に、ねんきん定期便などで自分の見込み額を確認しましょう。
- 老齢基礎年金(満額):年額約81.6万円(月額約6.8万円)
- 厚生年金(平均):全体で月額約14.5万円
- 個人差が大きい
加入期間による差
年金の受給額は、保険料を納めた期間が長いほど多くなります。
国民年金は40年間(480月)納付で満額となり、未納や免除期間があると減額されます。
厚生年金は、加入期間と給与額に応じて受給額が決まるため、長く働き高い収入があるほど年金額が増えます。
また、途中で転職や退職があった場合も、加入記録が正しく反映されているか確認が必要です。
- 納付期間が長いほど受給額が増える
- 国民年金は40年で満額
- 厚生年金は給与と加入期間で決定
夫婦・単身での違い
年金の受給額は、単身か夫婦かによっても生活設計に大きな違いが出ます。
夫婦ともに年金を受給できる場合、世帯全体の年金収入が増え、生活の安定につながります。
一方、単身の場合は自分の年金のみが頼りとなるため、私的年金や貯蓄の重要性が高まります。
また、配偶者が専業主婦(主夫)の場合、一定の条件を満たせば「第3号被保険者」として年金を受給できる仕組みもあります。
世帯構成 | 年金収入の目安 |
---|---|
単身 | 基礎年金+厚生年金(個人分) |
夫婦 | 基礎年金×2+厚生年金(夫婦分) |
受給開始年齢と繰上げ・繰下げ
原則65歳からの受給
公的年金の受給開始年齢は、原則として65歳からとなっています。
これは老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに共通です。
ただし、60歳から70歳の間で受給開始時期を選択することができ、自分のライフプランや経済状況に合わせて調整が可能です。
65歳より前に受給を始めると減額、遅らせると増額される仕組みになっています。
受給開始時期の選択は、老後の生活設計に大きな影響を与えるため、慎重に検討しましょう。
- 原則65歳から受給
- 60~70歳の間で選択可能
- 開始時期で金額が変動
繰上げ受給のメリット・デメリット
繰上げ受給とは、65歳より前に年金の受給を開始することです。
最短で60歳から受給できますが、1か月繰上げるごとに年金額が0.4%ずつ減額されます。
早く年金を受け取れるメリットがある一方で、一生涯にわたって減額された金額が続くため、長生きするほど総受給額が少なくなるデメリットもあります。
健康状態や就労状況、貯蓄などを考慮して判断することが大切です。
- 60歳から受給可能
- 1か月ごとに0.4%減額
- 一生涯減額が続く
繰下げ受給で増額する仕組み
繰下げ受給は、65歳以降に年金の受給を遅らせることで、年金額を増やす方法です。
1か月繰下げるごとに0.7%ずつ増額され、最大で75歳まで繰下げることができます。
長く働く予定がある方や、他の収入源がある方にとっては、将来の年金額を増やす有効な手段となります。
ただし、受給開始が遅れる分、受け取れる期間が短くなるため、健康やライフプランをよく考えて選択しましょう。
- 最大75歳まで繰下げ可能
- 1か月ごとに0.7%増額
- 将来の年金額を増やせる
受給開始年齢 | 年金額の変動 |
---|---|
60歳(繰上げ) | 最大24%減額 |
65歳(原則) | 基準額 |
75歳(繰下げ) | 最大84%増額 |
保険料の仕組みと免除制度
国民年金の保険料と納付方法
国民年金の保険料は、全国一律の定額制で、令和7年度(2025年度)は月額17,510円です。
納付方法は、口座振替やクレジットカード払い、現金納付など複数の選択肢があります。
前納割引や口座振替割引など、お得な納付方法も用意されています。
保険料は将来の年金受給額に直結するため、できるだけ納付を続けることが重要です。
- 令和7年度(2025年度)は月額17,510円
- 口座振替・クレジットカード・現金納付が可能
- 前納割引や口座振替割引あり
免除・猶予制度について
経済的な理由や失業、学生で収入がない場合など、国民年金の保険料を納めることが難しい場合には、免除や猶予制度を利用できます。
全額免除・一部免除・納付猶予・学生納付特例などがあり、申請が必要です。
免除期間中も将来の年金受給資格期間に算入されるため、未納のままにせず、必ず手続きを行いましょう。
- 全額免除・一部免除・納付猶予・学生納付特例がある
- 申請が必要
- 受給資格期間に算入される
未納が続くとどうなる?
国民年金の保険料を未納のまま放置すると、将来の年金受給資格を失ったり、受給額が大幅に減額されたりするリスクがあります。
また、障害年金や遺族年金の受給資格にも影響が出る場合があります。
経済的に厳しい場合は、免除や猶予制度を活用し、未納を避けることが大切です。
未納期間がある場合は、追納制度を利用して後から納付することも可能です。
- 受給資格を失うリスク
- 年金額が減額される
- 障害・遺族年金にも影響
公的年金と企業年金・私的年金の違い
公的年金は「基礎」
公的年金は、すべての国民が加入する「基礎」となる年金制度です。
老後の生活を最低限保障する役割を持ち、国民年金や厚生年金がこれに該当します。
公的年金だけでは十分な生活資金を確保できない場合も多く、老後の生活設計の土台として考えることが重要です。
公的年金は国が運営し、法律に基づいて給付が行われるため、安定性と信頼性が高いのが特徴です。
- すべての国民が対象
- 老後の生活の土台
- 国が運営し安定性が高い
企業型DCやiDeCoは「上乗せ」
企業年金や私的年金は、公的年金に「上乗せ」する形で設けられています。
企業型確定拠出年金(企業型DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)は、会社や個人が任意で積み立てる制度です。
これらは自分の努力や企業の福利厚生によって将来の年金額を増やすことができ、税制優遇も受けられます。
公的年金だけでは不安な場合、こうした制度を活用して老後資金を補うことが推奨されます。
- 企業型DC(企業年金)
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 税制優遇がある
NISAなど他制度との違い
NISAやつみたてNISAは、投資による資産形成を支援する制度であり、年金制度とは異なります。
年金は老後の生活資金を長期的・安定的に確保するための仕組みですが、NISAは株式や投資信託などの運用益が非課税になる制度です。
老後資金の準備には、公的年金を基礎としつつ、企業年金や私的年金、NISAなどの資産運用を組み合わせることが効果的です。
制度名 | 運営主体 | 主な特徴 |
---|---|---|
公的年金 | 国 | 基礎的な生活保障 |
企業年金・iDeCo | 企業・個人 | 上乗せ・税制優遇 |
NISA | 個人 | 投資運用益が非課税 |
まとめ:公的年金を理解して老後資金を準備する
まずは制度の仕組みを知ることが大切
公的年金は、老後の生活を支えるための重要な社会保障制度です。
制度の仕組みや種類、受給額の目安、受給開始年齢などを正しく理解することで、将来の不安を減らすことができます。
自分がどの年金に加入しているか、どれくらい受給できるのかを早めに確認し、必要な手続きを行いましょう。
- 制度の基本を理解する
- 自分の加入状況を確認
- 将来の受給額を把握
不足分は私的年金や投資で補う
公的年金だけでは老後の生活費が十分でない場合、企業年金やiDeCo、NISAなどの私的年金や資産運用を活用することが大切です。
早めに準備を始めることで、将来の安心につながります。
自分に合った方法を選び、無理のない範囲で積み立てや投資を行いましょう。
- 企業年金やiDeCoを活用
- NISAなどで資産運用
- 早めの準備が安心につながる
長期的なライフプランに組み込む
年金や資産運用は、長期的な視点で計画することが重要です。
ライフプランを立て、将来の収入と支出を見据えた資金計画を作成しましょう。
定期的に見直しを行い、変化に柔軟に対応することが、安心した老後生活への第一歩です。
- 長期的な視点で計画
- ライフプランを作成
- 定期的な見直しが大切
この記事の情報は一般的な内容であり、個別の状況によっては適用されない場合があります。最新の制度や詳細については、必ず年金事務所や専門家にご確認ください。