このページは、企業型確定拠出年金(DC)や確定給付型企業年金(DB)について知りたい会社員や経営者、転職を考えている方、将来の年金や退職金制度に不安や疑問を持つ方に向けた解説記事です。
企業年金の仕組みや違い、併用の可否、メリット・デメリット、選び方や注意点まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。
自分に合った年金制度を選ぶための基礎知識を身につけましょう。
確定拠出年金と確定給付年金とは?概要と仕組みをわかりやすく解説
企業年金には大きく分けて「確定拠出年金(DC)」と「確定給付年金(DB)」の2種類があります。
確定拠出年金は、企業や従業員が拠出した掛金を従業員自身が運用し、その運用成果によって将来の受取額が変動する制度です。
一方、確定給付年金は、企業が将来の給付額を約束し、運用や管理の責任も企業が負う仕組みです。
それぞれの特徴や仕組みを理解することで、自分に合った年金制度を選ぶ参考になります。
日本の年金制度における企業年金の位置づけ
日本の年金制度は「3階建て」と呼ばれ、1階が国民年金、2階が厚生年金、3階部分が企業年金や個人年金です。
企業年金は、会社が従業員のために用意する上乗せ年金で、老後の生活資金をより充実させる役割を担っています。
企業年金には、確定給付型(DB)、確定拠出型(DC)、厚生年金基金などがあり、企業ごとに導入状況や内容が異なります。
この3階部分の充実度が、将来の年金受取額や老後の安心感に大きく影響します。
確定拠出年金(DC・企業型/個人型)の基本を押さえる
確定拠出年金(DC)は、企業型と個人型(iDeCo)に分かれます。
企業型DCは会社が掛金を拠出し、従業員が自ら運用商品を選んで資産を増やします。
運用成績によって将来の受取額が変動するため、自己責任で資産形成を行う必要があります。
個人型(iDeCo)は自分で掛金を拠出し、同様に運用を行います。
どちらも税制優遇があり、老後資金の自助努力を促す制度です。
- 企業型DC:会社が掛金を拠出
- 個人型DC(iDeCo):本人が掛金を拠出
- 運用商品は自分で選択
- 運用成績で将来の受取額が変動
確定給付年金(DB・確定給付企業年金、厚生年金基金)とは
確定給付年金(DB)は、将来受け取る年金額があらかじめ決まっている企業年金制度です。
企業が掛金を拠出し、運用や管理も企業が行います。
運用成績が悪くても、企業が不足分を補填するため、従業員は安定した給付を受けられるのが特徴です。
厚生年金基金や確定給付企業年金が代表的な制度で、長期的な雇用を前提とした企業に多く導入されています。
ただし、企業側の負担やリスクも大きい点が課題です。
- 給付額があらかじめ決まっている
- 企業が運用・管理・給付の責任を負う
- 運用成績が悪い場合は企業が補填
- 長期雇用の企業に多い
確定拠出年金と確定給付年金の違いを徹底比較
確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)は、掛金の拠出方法や運用責任、将来の給付額の決まり方など、さまざまな点で違いがあります。
どちらが自分に合っているかを判断するためには、両者の特徴やリスク、メリット・デメリットをしっかり比較することが大切です。
以下の表やリストで、主な違いをわかりやすく整理します。
掛金・運用・給付額の違いと企業・従業員の責任
項目 | 確定拠出年金(DC) | 確定給付年金(DB) |
---|---|---|
掛金 | 企業・従業員が拠出 | 企業が拠出 |
運用責任 | 従業員本人 | 企業 |
給付額 | 運用成績で変動 | あらかじめ決定 |
リスク負担 | 従業員 | 企業 |
- DCは自己責任で運用、DBは企業が責任を持つ
- DCは運用次第で増減、DBは安定した給付
退職金・年金資産の受取方法の違いとポイント
確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)では、退職金や年金資産の受取方法にも違いがあります。
DCの場合、原則として一時金または年金として受け取ることができ、受取時の税制優遇もあります。
DBの場合も一時金・年金の選択が可能ですが、給付額があらかじめ決まっているため、将来の資金計画が立てやすいのが特徴です。
受取方法や税制の違いを理解し、自分に合った受け取り方を選ぶことが重要です。
- DC:一時金・年金の選択が可能
- DB:一時金・年金の選択が可能(給付額は確定)
- 受取時の税制優遇あり
どっちが得?メリット・デメリットとリスク比較
項目 | 確定拠出年金(DC) | 確定給付年金(DB) |
---|---|---|
メリット | 運用次第で資産が増える可能性/税制優遇/転職時の移換がしやすい | 給付額が安定/将来の資金計画が立てやすい/運用リスクがない |
デメリット | 運用リスクは自己責任/運用知識が必要 | 企業の経営状況に左右される/転職時の移換が難しい場合がある |
- DCは自己運用でリターンもリスクも自分次第
- DBは安定性重視だが、企業の経営リスクも考慮が必要
企業型確定拠出年金と確定給付型企業年金の両方を併用できる?
企業によっては、確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)の両方を導入し、併用しているケースもあります。
併用することで、従業員は安定した給付と自己運用による資産形成の両方のメリットを享受できます。
ただし、併用には制度上の制限や注意点もあるため、導入状況や仕組みをしっかり確認することが大切です。
両方もらえるケースとは?併用の仕組みと注意点
DCとDBの併用は、企業が両制度を導入している場合に可能です。
たとえば、基本給部分はDBで安定給付、成果報酬部分はDCで自己運用といった設計が一般的です。
ただし、併用時は掛金の上限や税制優遇の枠に注意が必要です。
また、転職や退職時の移換手続きも複雑になる場合があるため、事前に制度内容を確認しましょう。
- 企業が両制度を導入している場合に併用可能
- 掛金や税制優遇の上限に注意
- 移換手続きが複雑になることも
勤務先による導入状況と選択肢
企業年金の導入状況は企業規模や業種によって異なります。
大企業ではDBとDCの併用や選択制を導入しているケースが多く、中小企業ではDCのみ、または企業年金自体がない場合もあります。
自分の勤務先がどの制度を導入しているか、また選択肢があるかを人事部などに確認することが大切です。
転職時にも企業年金制度の有無や内容をチェックしましょう。
- 大企業は併用や選択制が多い
- 中小企業はDCのみ、または未導入も
- 転職時は企業年金制度の有無を確認
併用時の税制優遇措置・控除の考え方
DCとDBを併用する場合、掛金の合計が税制優遇の上限を超えないように注意が必要です。
企業型DCの掛金は、DBの有無によって上限額が異なります。
また、個人型DC(iDeCo)への加入可否や掛金上限も、勤務先の制度によって変わります。
税制優遇を最大限活用するためには、制度の仕組みや控除枠をしっかり把握しましょう。
制度 | 掛金上限(月額) |
---|---|
企業型DCのみ | 55,000円 |
DBとDC併用 | 27,500円 |
- 併用時は掛金上限が低くなる
- 税制優遇枠を超えないよう注意
企業型確定拠出年金・確定給付型企業年金のメリットとデメリット
企業型確定拠出年金(DC)と確定給付型企業年金(DB)は、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。
DCは自己運用による資産形成の自由度が高く、転職時の移換も比較的容易ですが、運用リスクを自分で負う必要があります。
DBは給付額が安定しており、将来の資金計画が立てやすい反面、企業の経営状況によっては制度変更や給付減額のリスクもあります。
両者の特徴を理解し、自分のライフプランやリスク許容度に合わせて選択することが重要です。
確定拠出年金(企業型・個人型/iDeCo)の主なメリットと注意点
- 運用次第で資産が大きく増える可能性がある
- 税制優遇(掛金全額所得控除、運用益非課税、受取時の優遇)
- 転職・退職時に他の年金制度へ移換しやすい
- 運用リスクは自己責任で、元本割れの可能性もある
- 運用知識や定期的な見直しが必要
確定拠出年金は、自己責任で運用するため、資産形成の自由度が高い一方で、運用成績によっては元本割れのリスクもあります。
税制優遇が大きな魅力ですが、運用商品選びや定期的な見直しが重要です。
確定給付企業年金のメリット・負担・責任
- 将来の給付額があらかじめ決まっているため安心
- 運用や管理の責任は企業が負う
- 長期的な雇用を前提とした安定した制度
- 企業の経営状況によっては制度変更や給付減額のリスクも
- 転職時の移換が難しい場合がある
確定給付企業年金は、安定した給付が魅力ですが、企業の経営リスクや転職時の移換のしにくさがデメリットです。
長期的に同じ企業で働く人に向いています。
マッチング拠出・制度移換などポータビリティへの対応
企業型確定拠出年金では、従業員が自分の意思で追加拠出できる「マッチング拠出」や、転職・退職時に他の年金制度へ資産を移換できる「ポータビリティ」が特徴です。
これにより、ライフスタイルやキャリアの変化に柔軟に対応できます。
一方、DBは移換が難しい場合が多く、転職時の資産の取り扱いに注意が必要です。
- DCはマッチング拠出や移換が可能
- DBは移換が難しい場合が多い
- 転職・退職時の手続きに注意
企業型確定拠出年金の商品選びとおすすめポイント
企業型確定拠出年金では、さまざまな運用商品から自分で選択して資産運用を行います。
商品選びは将来の資産形成に大きく影響するため、リスクとリターンのバランスや手数料、運用実績などをしっかり比較しましょう。
自分のライフプランやリスク許容度に合った商品を選ぶことが大切です。
選べる商品の種類と特徴、資産運用のポイント
- 元本確保型(定期預金・保険など):リスクが低いがリターンも低い
- 投資信託(国内外株式・債券・バランス型など):リスクとリターンのバランスを選べる
- 運用期間や目標に合わせて分散投資が重要
商品選びでは、リスク分散や長期運用を意識し、複数の商品を組み合わせるのがおすすめです。
また、運用状況を定期的に見直すことも大切です。
手数料・運用益・受取時の税制など比較ポイント
比較項目 | ポイント |
---|---|
手数料 | 信託報酬や管理手数料が低い商品を選ぶ |
運用益 | 過去の実績やリスクを確認 |
税制 | 運用益は非課税、受取時の税制優遇も確認 |
- 手数料が低いほど長期的に有利
- 運用益やリスクを比較
- 税制優遇を最大限活用
おすすめ商品と選び方のアドバイス
おすすめは、信託報酬が低く、分散投資ができるバランス型投資信託やインデックスファンドです。
リスクを抑えたい場合は元本確保型商品を中心に、リターンを狙いたい場合は株式型やバランス型を組み合わせましょう。
自分の年齢や退職までの期間、リスク許容度に合わせて商品を選ぶことが大切です。
- 信託報酬が低い商品を選ぶ
- 分散投資を心がける
- 定期的に運用状況を見直す
加入・移換・退職時に知っておくべきポイント
企業型確定拠出年金や確定給付型企業年金に加入する際や、転職・退職時には、制度ごとの手続きや注意点を理解しておくことが重要です。
加入資格や掛金の上限、マッチング拠出の有無、転職時の資産移換方法、退職金や年金給付金の受け取り方など、ライフイベントごとに必要な知識を身につけておきましょう。
これにより、将来の資産形成や税制優遇を最大限に活用できます。
加入資格、掛金、拠出限度額、マッチング拠出の基礎
- 企業型DCは企業が導入している場合に加入可能
- 掛金は企業が拠出し、マッチング拠出があれば従業員も追加拠出可能
- 掛金の上限は制度や併用状況によって異なる
- iDeCoは個人で加入し、掛金上限は職業や他制度の加入状況で変動
加入時は自分がどの制度に該当するか、掛金の上限やマッチング拠出の有無を確認しましょう。
また、税制優遇の枠を超えないよう注意が必要です。
転職・退職時の移換手続きと企業年金連合会の役割
転職や退職時には、企業型DCの資産を他の年金制度や個人型DC(iDeCo)へ移換する手続きが必要です。
移換手続きを怠ると、資産が自動的に企業年金連合会に移され、運用が制限される場合があります。
DBの場合は、転職先で同じ制度がなければ一時金として受け取ることもありますが、税制上の不利が生じることもあるため注意が必要です。
企業年金連合会は、移換資産の一時的な受け皿として重要な役割を担っています。
- DCは転職・退職時に移換手続きが必要
- 手続きを怠ると企業年金連合会に自動移換
- DBは転職先での継続が難しい場合が多い
退職金・年金給付金の受け取り方・注意点
退職金や年金給付金は、一時金または年金として受け取ることができます。
受取方法によって税制優遇の内容が異なるため、どちらが有利かを事前にシミュレーションしておくと安心です。
また、受取時期や手続きの期限にも注意が必要です。
特に一時金で受け取る場合は、退職所得控除の範囲内に収めることで税負担を軽減できます。
- 一時金・年金の選択が可能
- 税制優遇の違いを確認
- 受取時期や手続き期限に注意
まとめ:あなたにあった企業年金の選び方・組み合わせを検討しよう
企業型確定拠出年金(DC)と確定給付型企業年金(DB)は、それぞれ異なる特徴とメリット・デメリットがあります。
自分のライフプランやキャリア、リスク許容度、勤務先の制度内容を踏まえて、最適な組み合わせや受取方法を選ぶことが大切です。
転職や退職時の手続き、税制優遇の活用も忘れずに、将来の安心した資産形成を目指しましょう。
不明点があれば、勤務先の人事部や専門家に相談するのもおすすめです。
- 自分に合った制度を選ぶ
- 税制優遇や手続きのポイントを押さえる
- 将来の資産形成に役立てる