確定給付企業年金(DB)に加入している人が転職した場合、その制度を「そのまま引き継ぐ」ことはできません。
確定給付年金は会社ごとに設計されており、退職した時点でその企業の制度からは原則として資格喪失となります。
しかし、これまで積み立てられた年金が消えるわけではなく、退職後は次のいずれかの扱いになります。

まず最も多いのが、企業年金連合会への移換です。一定の加入期間がある場合、退職者の年金原資が企業年金連合会に移され、原則65歳以降に年金として受け取ることができます。
転職先に企業年金制度がなかったり、制度が異なったりする場合でも受給権を守る仕組みとして位置づけられています。
次に、会社の制度次第では、一時金として受け取るケースがあります。
ただし一時金を受け取ると将来の企業年金としての受給権はなくなり、税金の扱いも「退職所得」になります。短期的に現金が必要な場合以外は慎重な判断が必要です。
また、転職先にも企業年金制度があり、制度間で通算制度の対象となる場合は、年金原資を移すことで将来の年金額を継続的に積み上げることができる場合があります。
ただし、制度の種類が違えば通算できないことも多く、「DB→DC」「DB→中退共」などは基本的に直接移換はできません。
このように、確定給付年金は「会社に紐づく制度」ですが、退職しても受給権が消えないよう守られた仕組みが用意されています。
したがって転職時にすべきことは、「受け取り方法の選択」と「将来どの制度で老後資産を積み上げていくか」を考えることです。
なお、転職後に老後資産形成を継続するには、企業型DCやiDeCoなどの活用が現実的です。
特に企業型DCは、会社の制度として資産形成を続けられ、採用・定着にも効果があるため、企業側にとっても従業員側にとっても有効な選択肢となります。







