建退共証紙を金券ショップで売るのは違法になりますか?

建設業退職金共済(建退共)の共済証紙を金券ショップで売買する行為は、建退共制度の趣旨と約款に明確に反するものであり、結論として「絶対に行ってはならない行為」です。

この行為は、制度の根幹を揺るがし、関わる事業者と労働者の双方に深刻な不利益をもたらす複数のリスクを内包しています。

退職金

建退共制度は、事業主が自社の建設現場で働く労働者に対し、その就労実績に応じて証紙を適切に購入し、共済手帳に貼付することで退職金を確実に積み立てることを前提としています。

このため、証紙は「購入した事業者が、自身の雇用する労働者のために使用すること」が大原則であり、第三者への譲渡や転売は一切想定されていません。

金銭的な取引を目的とした転売市場への流通は、制度の約款上、重大な違反行為とみなされます。 まず、転売された証紙は建退共で無効と判断されるおそれが非常に高いという実務上のリスクがあります。

建退共の証紙は、購入した事業者の情報や購入履歴が内部で管理されており、労働者の退職金計算時にその履歴(受払簿)と照合されることで初めて有効性が確認されます。

金券ショップなどの第三者を経由した証紙は、正規の購入ルートから外れているため、購入履歴が不明確であり、建退共側が「無効」と判断する可能性があります。

仮に一時的に使用できたとしても、後から不正な流通が指摘されれば貼付自体が無効となり、最終的に労働者の退職金が認定されないという最悪の事態を引き起こしかねません。

さらに重大なリスクとして、転売市場における偽造証紙の混入が挙げられます。建退共証紙は金銭的価値を持つため、これを悪用した偽造品が流通しやすいという現実があります。

事業主が「少しでも安く購入したい」という動機で偽造証紙を意図せず使用した場合でも、制度を不正に利用したと見なされる可能性があり、刑事事件に発展するリスクさえ伴います。

「安易な利益追求」や「余剰証紙の現金化」という軽い気持ちで転売に関与することは、企業の信頼を失墜させ、法的なトラブルに巻き込まれるという極めて危険な行為です。

また、余ってしまった証紙を金券ショップで売却する行為も制度違反となります。本来、使用予定がなくなった余剰証紙が発生した場合、事業主は建退共の取扱金融機関や本部に相談することで、正規の手続きに基づいた交換や精算が可能です。

制度内で認められている正規のルートがあるにもかかわらず、これを無視して勝手に転売することは、制度の透明性を損ない、悪質な行為として扱われる可能性があります。

結論として、建退共証紙の金券ショップ等での売買は、制度上の違反リスク、法的なトラブルリスク、偽造品混入リスクを多重に抱えており、結果的に事業主と労働者の双方に不利益しかもたらしません。

事業主は、労働者の将来を守る責任を負う立場として、ルールと約款を遵守し、証紙を正しく購入・管理・貼付することが、会社と労働者双方を守るための唯一の方法です。

もし、建設業の退職金制度をさらに手厚くしたいのであれば、リスクを冒して違法な転売に関わるのではなく、建退共に加えて企業型確定拠出年金(企業型DC)を導入するなど、正規の税制優遇を活用した方法で、労働者と経営者双方の退職金・老後資金を計画的に積み増す健全な選択肢があります。

適切な制度設計こそが、企業経営の安定と将来の安心を築く基盤となります。

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