投資信託と分散投資は、どちらも投資に関する言葉ですが、意味はまったく異なります。
簡単に言うと、投資信託は「金融商品の種類」であり、分散投資は「投資の方法や考え方」です。
この二つは別のものですが、実はとても深く関係しています。
まず、投資信託とは、投資家から集めたお金をまとめて専門家(ファンドマネージャー)が運用する金融商品です。
個人では買うのが難しい多数の株式や債券、不動産などに対して、少額からでも投資できるのが特徴です。
たとえば、あなたが1万円を投資信託に預けると、そのお金は世界中の企業や国債などに分散して投資されます。
つまり、ひとつの投資信託の中で、すでに「分散投資」が実現されているともいえるのです。
一方、分散投資とは、投資のリスクを減らすために、お金を複数の投資先に分けて投資することを意味します。
たとえば、株式だけに全額を投じるのではなく、株・債券・不動産・金など、値動きの異なる資産に分けて投資することで、どれかが下がっても他が支えてくれる状態を作ります。
これが「卵を一つのカゴに盛るな」という格言の考え方です。
つまり、分散投資とはリスクを抑えるための投資の基本戦略であり、特定の商品ではありません。
投資信託は、こうした分散投資を簡単に実現するための手段のひとつです。
自分で複数の株や債券を買おうとすると、時間も知識も資金も必要ですが、投資信託ならプロが代わりに分散投資を行ってくれます。
つまり、投資信託を1本買うだけで、世界中のさまざまな資産に分散投資できる仕組みが組み込まれているのです。
ただし、すべての投資信託が分散されているわけではありません。
中には、特定の地域や業種だけに投資する「テーマ型ファンド」もあります。
たとえば「米国ハイテク株ファンド」などは分散の範囲が狭いため、値動きが大きくなるリスクがあります。
このため、投資信託を選ぶ際にも、「どのくらい分散されているか」「どの資産に投資しているか」を確認することが重要です。
まとめると、投資信託は「プロに任せて複数の資産に投資できる金融商品」であり、分散投資は「リスクを減らすために複数に分ける考え方」です。
両者はセットで考えることで力を発揮します。
投資信託は分散投資のための便利な道具であり、長期的に安定した資産形成を目指すなら、複数の投資信託を組み合わせて、より広い分散を目指すのが理想的です。
そして、この「分散して長く続ける」仕組みを制度として支えているのが、企業型確定拠出年金(DC)です。
毎月一定額を積み立てながら投資信託を通じて分散運用を行うことで、時間と複利の力を味方につけ、安定的にお金を育てていくことができるのです。