iDeCo(イデコ)は「何年で元が取れるか?」という質問に対して、一概には「○年」と断言できません。なぜなら、元が取れるまでの期間は節税効果・運用利回り・手数料などによって大きく変わるからです。ただし、仕組みを理解すると、多くの人は数年〜10年程度で元を取れることがわかります。
まず、iDeCoの基本は「掛金の全額が所得控除になる」という点です。たとえば、月2万円(年間24万円)を積み立てた場合、所得税率10%+住民税10%の人なら、年間24万円×20%=4万8,000円の節税効果があります。これだけで、年間の掛金の約20%が“戻ってくる”計算です。
一方、iDeCoには手数料もかかります。初期費用が約2,829円、運用中は毎月171〜450円ほどです。仮に月300円として年間3,600円、20年間で7万2,000円のコストになります。つまり、年間4〜5万円の節税があれば、わずか2年で手数料分の元が取れることになります。
ここで重要なのは、節税効果だけでも元を取れる点です。iDeCoの運用結果がたとえゼロ(=定期預金型)でも、税金が安くなる分だけでトータルの利益が生まれます。つまり「投資の利益を出さなくても得をする」仕組みです。
さらに、運用で年率3%程度の利回りが得られれば、掛金が複利で増えていくため、元本を上回るスピードは加速します。たとえば月2万円を20年間、年3%で運用すると、積立総額480万円に対して約654万円になり、174万円のプラスです。この運用益も非課税なので、通常の投資よりも効率よく増やすことができます。
ただし、注意点もあります。所得が少なく税金をほとんど払っていない人(専業主婦や低所得者など)は、節税メリットが小さいため、元が取れるまでに時間がかかります。また、iDeCoは60歳まで引き出せないため、「途中で使いたい」と思っても現金化できません。短期間で利益を得る目的ではなく、老後資金としてコツコツ積み立てるのが前提です。
まとめると、平均的な会社員であれば、2〜5年ほどで手数料分の元が取れるケースが多く、その後は節税効果と運用益で利益が積み上がります。iDeCoは「短期で増やす商品」ではなく、「節税を味方にして長期で得を積み上げる仕組み」です。
また、もしあなたが経営者や役員であれば、より早く大きく元が取れるのは企業型確定拠出年金(DC)です。企業型DCなら掛金を会社の経費として処理でき、法人税も節税できるため、個人のiDeCoよりも有利です。iDeCoで2〜5年かかる「元取り期間」が、企業型DCでは実質1年未満になるケースもあります。