社会福祉施設職員等退職手当のメリットとデメリットは何ですか?

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社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、社会福祉法人や医療法人などで働く職員の退職金を確実に確保するための共済制度です。厚生労働省の認可を受けた独立行政法人「福祉医療機構(WAM)」が運営しており、福祉・医療業界の職員の安定した雇用と生活保障を目的としています。

参照:社会福祉施設職員等退職手当共済制度(社会福祉医療機構)

この制度の最大のメリットは、退職金が「確実に支給される」ことです。制度設計は「確定給付型」であり、将来の給付額があらかじめ算定されているため、職員本人が運用を心配する必要はありません。共済側が一括して資金を運用・管理するため、経済情勢の変化に左右されにくく、安定した給付が期待できます。

また、業界共通の通算制度があることも大きな利点です。社会福祉法人や医療法人の間で転職や異動をしても、同じ共済制度に加入していれば掛金納付期間を通算でき、勤続年数が途切れません。福祉・介護・保育といった業界では転職が多いため、この仕組みは職員にとって非常に安心感があります。

さらに、税制面でも優遇されています。法人が拠出する掛金は全額損金算入が可能で、法人税の節税につながります。退職時に支給される共済金も「退職所得」として扱われ、退職所得控除や1/2課税の対象となるため、受け取る職員の税負担も軽減されます。

一方で、デメリットもあります。まず、制度の柔軟性が低いことです。共済制度は国が認可した公的な仕組みであるため、掛金額や給付内容は基本的に全国統一で決められており、企業の事情に合わせて自由に設計することはできません。経営状況に応じて掛金を調整したり、社員の等級別に独自の退職金規定を設けることも難しいのが実情です。

また、運用による資産の増加が期待できない点もデメリットといえます。社会福祉施設職員共済は安全運用を重視しており、元本保証型の運用が中心のため、インフレが進行すると実質的な退職金の価値が目減りするリスクがあります。企業型確定拠出年金(DC)のように個人の運用次第で退職金を増やすといった可能性はありません。

さらに、短期勤続者にとっては給付額が少なくなる傾向があります。制度は長期加入を前提としており、加入期間が短いと共済金額も小さくなります。

まとめると、社会福祉施設職員共済は「安定と確実性」を重視した制度であり、長期勤務者には非常に有利です。しかし、制度の柔軟性や資産成長性には限界があるため、近年では「共済で安定を確保し、企業型確定拠出年金(DC)で運用による成長を目指す」という併用型の退職金設計を行う法人も増えています。

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