はぐくみ企業年金基金は、中小企業が共同で利用できる確定給付企業年金(DB)制度です。中小企業が単独で年金制度を運営するのが難しいため、基金を通じて掛金を拠出し、従業員に将来の退職金や年金を用意できる仕組みになっています。では、企業が負担する掛金は「損金」として処理できるのでしょうか。
結論からいえば、はぐくみ企業年金への事業主掛金(企業が負担する掛金)および運営事務費は全額損金算入できます。これは、企業が従業員の退職金や年金のために拠出する掛金が「福利厚生費」として認められるためです。
企業が掛金を支払った時点で損金処理が可能となり、法人税の課税所得を圧縮できるため、節税効果が期待できます。これは中退共(中小企業退職金共済)や企業型確定拠出年金(DC)と同様の税務上の優遇です。
税務処理の実務としては、基金に対して支払った掛金や事務費を「福利厚生費」または「退職給付費用」として損金に計上します。損金算入にあたって特別な制限はなく、全額を費用として認められます。
一方で注意点もあります。はぐくみ企業年金は確定給付型(DB)であるため、将来の給付額は保証されており、その運用責任は企業側にあります。多くの企業が採用する「選択制」の場合、従業員の掛金は給与からの拠出となるため企業の追加的な資金負担は生じませんが、運用が不調で積立不足が生じた場合には、企業がその不足分を補填する義務(財務的なリスク)を負うことになります。
つまり、税務上のメリットがある反面、将来的な資金繰りへの影響を見極めた上で導入することが重要です。また、役員が選択制を利用して掛金を拠出する場合、その掛金が損金として認められないケースがあるため、事前に顧問税理士に確認が必要です。
掛金を損金処理した段階では従業員の課税所得にはなりません。従業員にとっては、将来の退職金や年金として受け取るときに初めて課税対象となります。その際には退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、受け取り時の税負担も軽減されます。
企業にとっては「支払時に損金算入できる節税メリット」、従業員にとっては「受け取り時に控除を受けられる節税メリット」がダブルで享受できるのです。
まとめると、はぐくみ企業年金への事業主掛金は全額損金算入でき、法人税の負担を軽減できるため企業にとって有利な制度です。ただし、企業は将来にわたり積立不足補填のリスクを負う義務があるため、経営計画と資金繰りの観点から慎重に導入を検討すべきです。
より柔軟に掛金をコントロールしたい場合やインフレ対応を重視するなら、企業型確定拠出年金(DC)の導入と比較・併用するのも選択肢になるでしょう。