小規模企業共済は、中小企業基盤整備機構が運営する、経営者や個人事業主のための退職金制度です。掛金が全額所得控除となる節税効果や、退職金・老後資金の準備ができるという大きなメリットがあります。
しかし中には「資金繰りが厳しくなった」「老後資金以外の目的でお金を使いたい」といった理由でやめたいと考える方もいます。では、具体的にどうすればやめられるのでしょうか。
まず、小規模企業共済をやめる場合には「解約」の手続きが必要です。解約の申請は、取扱い窓口である商工会議所・商工会・中小機構の委託団体、または金融機関を通じて行います。申込書を提出し、本人確認書類や印鑑などが必要になります。解約手続きが完了すると、これまで積み立てた掛金に応じた「解約手当金」が支払われます。
ただし注意点があります。掛金納付月数が12ヶ月未満で解約した場合は一切共済金を受け取れません。また、掛金納付月数が20年未満で解約すると、受け取れる解約手当金が掛金総額を下回り、元本割れするケースが多いのです。
逆に20年以上積み立てていれば、支払った掛金総額以上を受け取れる仕組みになっています。そのため、短期でやめると大きな損をする可能性がある点は理解しておく必要があります。
また、解約理由によって受け取れる共済金の種類や税務上の扱いも変わります。事業廃止や役員退任など「共済金支給事由」に該当する場合は、共済金として受け取れ、税制上「退職所得控除」が適用されます。
一方で、自己都合による任意解約の場合は「解約手当金」となり、一時所得や雑所得として課税されることがあり、税負担が重くなる可能性があります。
やめる前に検討すべき選択肢として「掛金の減額」や「掛金の納付を一時停止する方法」もあります。資金繰りが厳しい場合でも、最低掛金の月1,000円に変更することで継続することが可能です。
また、納付を停止して積み立てた掛金を据え置くこともでき、将来「準共済金」として受け取れるため、解約より有利になるケースがあります。
まとめると、小規模企業共済をやめたい場合は「解約手続き」を行えば可能ですが、加入期間によっては元本割れや税負担の増加につながるリスクがあります。やめる前に、掛金の減額や納付停止といった代替策を検討し、長期的に制度のメリットを活かす方が賢明な場合も少なくありません。
老後資金づくりの観点からも、安易に解約するのではなく、将来の受け取り方や他制度(iDeCoや企業型DC)との併用も含めて慎重に判断することが重要です。