小規模企業共済は、経営者や個人事業主のための退職金制度として知られていますが、もう一つ大きな特徴に「貸付制度」があります。これは、共済に積み立ててきた掛金を担保として、中小企業基盤整備機構から低利でお金を借りられる仕組みです。
事業資金や生活資金が必要になったときに柔軟に利用できるため、経営者にとって心強い制度になっています。
貸付制度は大きく分けて 「一般貸付」 と 「緊急経営安定貸付」などの特別貸付」 に分かれます。
まず「一般貸付」では、掛金納付月数が12ヶ月以上ある人を対象に、これまでに積み立てた掛金の範囲内で借入が可能です。利用できる金額は掛金納付月数に応じた貸付限度額の範囲で決まり、最大全額の90%程度まで借りられる仕組みです。
返済期間は最長7年、金利は市中金利よりも低めに設定されています。借入申込から入金までの手続きも比較的スピーディーで、資金繰りが急に必要になったときに活用しやすいのがメリットです。
一方で、景気変動や災害などによって経営が急激に悪化した場合には「緊急経営安定貸付」「災害時貸付」といった特別貸付制度を利用できます。これらは通常の一般貸付よりも条件が緩和され、金利が低く設定されることもあります。新型コロナウイルス感染症の流行時には、緊急対応として特例貸付が活用された事例もあります。
貸付制度を利用する場合の大きな特徴は、共済に積み立てた掛金が担保になるため、信用保証や第三者保証人が不要という点です。中小企業や個人事業主にとって、銀行からの借入は審査や担保の問題で難しいケースもありますが、小規模企業共済の貸付であれば積立実績を背景に安心して利用できます。
ただし、注意点もあります。借入できる金額はあくまで積立額に応じて決まるため、掛金の積立が少ない段階では大きな金額を借りることはできません。また、借入を返済しないまま共済を解約する場合には、解約手当金から借入残高が差し引かれることになります。そのため、利用する際は返済計画を立てることが重要です。
まとめると、小規模企業共済の貸付制度は、積立金を担保に低利で資金を借りられる経営者向けのセーフティネットです。資金繰りが厳しいときに迅速に利用できる点は非常に便利ですが、掛金の積立額や返済計画を踏まえて上手に活用することが大切です。