オフショア投資は、ケイマン諸島やシンガポール、ルクセンブルクなどの海外金融センターを利用して資産運用を行う仕組みです。このような地域は法人税や所得税が低い、あるいはゼロに設定されていることから「タックスヘイブン」と呼ばれ、国際的な投資資金の受け皿になっています。では、このオフショア投資は日本に住む個人にとって合法なのでしょうか。
結論から言えば、オフショア投資そのものは合法です。海外の金融商品に投資すること自体は違法ではなく、富裕層やグローバル企業だけでなく、一般の投資家も利用することが可能です。
たとえば、日本国内から海外ETFや外貨建て投資信託に投資するのと同様に、オフショア地域のファンドや保険に加入する行為そのものは法律で禁止されていません。
しかし、合法であるためには条件があります。それは「日本の税法や申告義務を守ること」です。日本に居住している場合、所得は「全世界所得課税」の対象となり、海外で得た利益もすべて日本で申告しなければなりません。
現地で非課税だったとしても、日本での課税を免れることはできません。確定申告を正しく行い、場合によっては外国税額控除を適用して二重課税を調整することが必要です。
逆に言えば、オフショア投資で得た利益を申告せずに隠すことは違法であり、これは租税回避ではなく「脱税」にあたります。過去にも海外口座を利用した所得隠しが摘発された事例があり、国税庁は国外送金や海外口座残高を把握する仕組みを強化しています。
2017年以降はOECDによるCRS(共通報告基準)に基づいて、各国の税務当局間で口座情報が自動的に交換されるようになったため、申告漏れはすぐに発覚する環境が整っています。
また、オフショア投資を勧誘する一部の業者の中には「日本の税金が一切かからない」「完全に無税で運用できる」といった誤解を招く説明をするところもありますが、これは正しくありません。日本に住んでいる限り、利益には必ず課税されるため、「節税目的でオフショアに逃がせば合法的に無税」というのは誤解です。
まとめると、オフショア投資は「合法」ではあるものの、それは正しく申告を行うことを前提としています。合法か違法かを分けるのは投資そのものではなく、税務処理の姿勢です。
国内にもNISAやiDeCo、企業型確定拠出年金(DC)といった税制優遇制度が整備されており、まずはこれらを活用する方が安全で確実に節税効果を得られるでしょう。そのうえで、国際分散投資や資産拡大を目的としてオフショアを利用するのであれば、合法的かつ有効な選択肢となり得ます。