ドルコスト平均法は、一定額を定期的に投資することで購入単価を平均化し、長期的にリスクを抑えながら資産形成を行う手法です。初心者にとって心理的なハードルが低く、確定拠出年金(DC)やiDeCoのような制度でも自然に実践される有効な方法といえます。しかし、万能ではなく、いくつかの弱点や注意点があります。
第一に、「長期的に価格が下がり続ける商品」には効果がありません。ドルコスト平均法は価格変動を前提としているため、値上がり局面で力を発揮します。しかし、企業の業績悪化で株価が下がり続けるような商品に積み立てていれば、平均購入単価は下がるものの最終的に資産価値が回復しなければ損失は避けられません。つまり「商品選び」が極めて重要であり、分散投資と組み合わせることが欠かせません。
第二に、「上昇相場では一括投資に劣る」ことです。ドルコスト平均法は時間を分散させて投資するため、右肩上がりに価格が上昇し続ける局面では平均購入単価が高くなり、早くまとめて投資していれば得られたはずの利益を取り逃してしまうケースがあります。長期的な資産形成には適していても、短期間で大きなリターンを狙う方法ではないのです。
第三に、「投資効率が悪化する可能性」があります。定期的に少額を投資するため、購入のたびに信託報酬や手数料がかかる場合には、コスト負担が積み重なりリターンを圧迫します。最近では低コストの投資信託やネット証券が増え、この弱点は軽減されつつありますが、投資先の選び方を誤ると長期的な資産形成に不利になる恐れがあります。
第四に、「心理的に安心しすぎる」点も挙げられます。ドルコスト平均法を使えば必ず儲かる、損をしないと誤解してしまう人がいますが、元本割れのリスクはゼロにはなりません。長期的に市場が成長する前提があって初めて効果を発揮する手法であり、マーケット全体が衰退すれば効果は限定的です。
確定拠出年金のように数十年単位で運用する場合には、ドルコスト平均法はリスクを軽減しながらコツコツと積み立てるのに適しています。ただし、投資対象を適切に選び、長期・分散・低コストという原則を守ることが不可欠です。
まとめると、ドルコスト平均法の弱点は「下落し続ける商品には効果がない」「上昇相場では一括投資に劣る」「手数料の影響を受けやすい」「損失を完全に避けられるわけではない」といった点にあります。したがって、万能な投資法ではなく、長期的に成長が期待できる分散投資と組み合わせることで真価を発揮する手法と理解することが大切です。