建設業退職金共済証紙の金額はいくらですか?

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建設業退職金共済制度(建退共)は、建設業界で働く人々の退職金を国が保障する公的な制度です。この制度は、転職や現場移動が多いという建設業特有の働き方に対応するため、会社が変わっても退職金記録を通算できる仕組みを中核としています。

労働者一人ひとりに交付される「建設業退職金共済手帳(共済手帳)」が、その記録媒体となります。

参考:建設業退職金共済(独立行政法人 勤労者退職金共済機構)

事業主は、労働者の就労日数に応じて「共済証紙」を購入し、この手帳に貼り付けます。この証紙が退職金の原資として積み立てられます。現在の共済証紙の金額は、1日あたり320円です(※この金額は令和6年10月1日に改定されました)。

この320円全額が労働者のために積み立てられ、退職時に建退共本部から本人に支払われます。重要な点として、証紙の購入代金は事業主が全額負担する義務があり、労働者に費用を求めたり、賃金から差し引いたりすることは一切できません。また、事業主は証紙代を全額損金または必要経費に算入できるという税制優遇を受けられます。

建退共の最大のメリットは、雇用が流動的な建設業界において、働いた日数に応じて確実に退職金が積み上がるという安心感です。しかし、運用上の課題も存在します。手帳という紙ベースの管理に依存しているため、紛失や、事業主による証紙の貼り忘れ・購入漏れといった人為的なミスが発生するリスクがあります。

手帳を紛失しても積立記録そのものは本部で管理されているため受給権は守られますが、再発行の手続きには手間がかかります。労働者自身が手帳を大切に保管し、定期的に証紙の貼付状況を確認することが、将来のトラブル防止につながります。

近年、建設業界でも、より透明性が高く、管理が容易な退職金制度として企業型確定拠出年金(企業型DC)が注目を集めています。企業型DCでは、掛金が金融機関を通じて労働者本人の名義で直接管理されます。

オンラインで残高や運用状況をいつでも確認でき、紙の証紙のような紛失や貼り忘れのリスクがありません。さらに、掛金・運用益・受け取り時のすべてで税制優遇があるため、効率的な資産形成が可能です。

建退共は公的制度としての安心感がありますが、利便性や節税効果、リスク管理の観点からは、企業型DCは現代の働き方に合った選択肢といえるでしょう。建退共の証紙は1日320円で労働者の退職金を支えていますが、制度を選ぶ際は、それぞれの特徴を理解し、自身の働き方に最適なものを選ぶことが重要です。

>>建設業の退職金制度はどっちを選ぶべき?企業型確定拠出年金と建退共の違いと選び方

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