建設業退職金共済制度(建退共)に加入すると、労働者一人ひとりに交付されるのが「建設業退職金共済手帳(共済手帳)」です。事業主が購入した共済証紙をこの手帳に貼付することで、労働者の退職金記録が積み上がり、将来の受給額の基礎となります。では、この共済手帳を紛失してしまった場合の再発行手続きは、どのように行えばよいのでしょうか。
参考:建設業退職金共済(独立行政法人 勤労者退職金共済機構)
まず、共済手帳をなくした場合は 「再交付申請」を行う必要があります。申請方法は2つあり、①事業主を通じて申請する方法と、②労働者本人が直接建退共本部に申請する方法です。一般的には勤務先の事業主が窓口となり、建設業協会や商工会議所、銀行・信用金庫などの取扱機関に「共済手帳再交付申請書」を提出します。申請が受理されると、建退共本部から新しい共済手帳が発行され、事業主経由で労働者に交付されます。
再発行の際には、本人確認のための書類や申請書の記入が必要です。また、申請から新しい手帳が手元に届くまでには一定の時間がかかることがあります。ただし、共済手帳を紛失したからといって、退職金の積立記録そのものが消えてしまうわけではありません。建退共本部が証紙の貼付状況をシステムで管理しているため、労働者の受給権は守られています。この点は安心してよいでしょう。
とはいえ、手帳がない期間は労働者自身が証紙の貼付状況を確認できなくなるため、将来のトラブル防止のためにも再発行手続きはできるだけ早めに行うことが望ましいです。また、受け取った手帳は大切に保管し、定期的に記録を確認することが将来の安心につながります。
一方で、こうした「紙の手帳」に依存する仕組みは、建退共の弱点でもあります。万一の紛失や貼付漏れといったリスクは制度上避けられません。その点で、近年注目されているのが 企業型確定拠出年金(企業型DC) です。
企業型DCでは、会社が拠出した掛金が労働者本人の名義で金融機関に直接積み立てられ、残高や運用状況はオンラインでいつでも確認可能です。紙の紛失リスクはなく、会社を移っても資産は本人のもとに残るため、より透明で安心感のある制度といえます。
まとめると、建設業退職金共済手帳を紛失した場合は、事業主や建退共本部を通じて再発行の申請を行えば問題なく対応できます。ただし、今後の制度選びを考えるなら、紙媒体に頼らず、自分の名義で確実に管理される企業型DCという選択肢も検討する価値があるでしょう。