小規模企業共済は、中小企業の経営者や役員、個人事業主が自分自身の退職金を準備するために利用できる制度です。受け取り方法には、一括で受け取る方法、年金のように分割で受け取る方法、そして一括と分割を組み合わせる方法の3種類があります。その中でも「分割受取」には特有のメリットが存在します。
まず大きなメリットは、税制上の優遇を受けられることです。分割で受け取る場合、その収入は「公的年金等控除」の対象になります。これは国民年金や厚生年金と同じ扱いを受けるため、一定の金額までは非課税となり、課税されても控除を差し引いた後の金額に税率がかかります。
結果として一括で受け取るよりも税負担を軽くできる場合があります。特に他の所得が少ない人であれば、分割受取の方がより有利になる可能性が高いのです。
次に、老後資金を計画的に管理できることです。一括で大きな金額を受け取ると安心感はありますが、同時に「退職金の使いすぎ」や「投資での失敗」といったリスクを伴います。分割受取であれば、年金のように毎年一定額が支給されるため、生活費を安定的にまかなうことができます。公的年金の上乗せとして活用すれば、老後の生活水準を長期的に維持することが可能になります。
また、資産運用の負担を減らせることも分割受取のメリットです。一括で大金を受け取った場合、その後の資金をどのように運用するかは本人に任されますが、運用には知識・経験・時間が必要です。
分割受取なら、制度として定期的に給付されるため、自分で複雑な運用をする必要がなく、安定したキャッシュフローを確保できます。運用に自信がない人や堅実に資金を使いたい人には特に適しています。
さらに、心理的な安心感も見逃せません。毎年一定の金額が入ってくる仕組みは「第二の年金」として機能し、長生きするほど恩恵を受けられます。公的年金が十分でないと感じる個人事業主や中小企業経営者にとっては、老後の生活に安心感をもたらす制度設計といえるでしょう。
ただし、分割受取には注意点もあります。インフレが進むと毎年の受取額の実質的な価値が下がる可能性があり、また一括受取と比べて退職所得控除の効果を十分に活かせないケースもあります。
そのため、一括と分割を組み合わせる方法を選び、一部を退職金としてまとめて受け取り、残りを年金形式で受け取る人も少なくありません。
結論として、小規模企業共済の分割受取のメリットは、①公的年金等控除による税負担の軽減、②老後資金を安定的に確保できる点、③資産運用や管理の負担を減らせる点、④心理的な安心感の4つです。特に安定した生活設計を重視する経営者や個人事業主にとって、分割受取は魅力的な選択肢となるでしょう。