企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金は、原則として従業員個人が年末調整で申告する「所得控除」の対象にはなりません。これは、企業型DCの掛金が従業員の給与から支払われるのではなく、会社が退職金制度の一環として全額を拠出しているからです。
つまり、従業員の手元に給与として入る前に会社が掛金を支払っているため、その時点で課税所得に含まれず、税金計算の対象から外れています。
したがって、生命保険料控除やiDeCo(個人型確定拠出年金)のように、年末調整で控除証明書を提出して所得税控除を受ける必要はありません。企業型DCの場合は、会社の掛金拠出時点で自動的に非課税処理されているため、従業員は特別な手続きをしなくても税制優遇を受けていることになります。
ただし、このルールには例外があり、特に混同しやすいのがマッチング拠出と選択制確定拠出年金です。
選択制確定拠出年金では、従業員が給与の一部を現金で受け取るか、掛金として拠出するかを選べる仕組みです。この場合も、掛金として拠出した分は給与から天引きされる際に課税対象から外れて処理されるため、年末調整での申告は不要です。
マッチング拠出は、会社の掛金に加えて、従業員が自分の給与から追加で掛金を出す仕組みです。この従業員が拠出する分は、iDeCoと同様に所得控除の対象となります。そのため、年末調整で「小規模企業共済等掛金控除証明書」を提出し、控除を申告する必要があります。ここは企業型DCの基本ルールと大きく異なる点であり、申告を忘れると控除の恩恵を受けられません。
一方、混同しやすいiDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金を自分の銀行口座から支払うため、所得控除を受けるには毎年、「小規模企業共済等掛金控除証明書」を年末調整や確定申告で提出することが必須です。
結論として、企業型DCの掛金は原則として従業員が年末調整で申告する必要はありません。しかし、マッチング拠出で追加拠出をしている場合は、その分だけ年末調整での申告が必要です。この点を正しく理解し、iDeCoとの違いを区別しておくことが非常に重要です。