企業型確定拠出年金は老後資金形成に役立つ制度ですが、一方で「よくない」と言われる理由もいくつか存在します。
まず最大のデメリットは、将来受け取れる金額が保証されていない点です。従来の退職金制度や確定給付型企業年金では、企業が一定の給付額を約束していましたが、企業型確定拠出年金では会社が行うのは掛金の拠出までで、その後の運用は従業員自身の責任になります。
つまり、受け取る金額は市場環境や選んだ商品によって変動し、思うように増えないどころか元本を下回る可能性すらあるのです。老後資金を確実に確保したい人にとっては、大きな不安要素となります。
次に挙げられるのは、資金を自由に引き出せないことです。企業型確定拠出年金で積み立てた資産は、原則として60歳になるまで受け取ることができません。
たとえ病気や失業などの理由でお金が必要になっても、途中で解約して現金化することはできない仕組みです。老後資金を守るという点では合理的ですが、現役世代にとっては生活の柔軟性を失わせるデメリットにもなります。
さらに、制度が複雑で分かりにくい点も「よくない」と言われる理由です。拠出限度額は勤務先の制度や他の企業年金の有無によって異なり、運用商品も多種多様です。投資経験が乏しい人にとっては商品選びが難しく、結局は低金利の定期預金などを選んでしまい、十分な運用効果が得られないまま時間だけが過ぎてしまうことも少なくありません。
また、退職や転職の際に資産を移換する手続きを忘れてしまうと、自動的に国民年金基金連合会に移され、運用が止まった状態で手数料だけが差し引かれることになります。このように、仕組みを正しく理解していないと損をしてしまうリスクがあるのです。
結論として、企業型確定拠出年金が「よくない」とされる理由は、運用リスクを個人が負うこと、資金を60歳まで引き出せないこと、制度や手続きが複雑であることにあります。
制度をきちんと理解し、自分に合った運用を続けられる人にとっては有利な制度ですが、仕組みを知らずに放置したり、短期的に資金を使いたいと考える人にとっては使い勝手が悪く「よくない」と感じられる制度になりやすいのです。