企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が掛金を拠出し、従業員が自ら運用して老後に年金や一時金として受け取る仕組みです。老後資金形成に役立つ一方で、注意すべきデメリットも存在します。
第一に運用リスクが個人にあるという点です。確定給付型年金や従来の退職金のように将来の受け取り額が約束されているわけではありません。投資信託を中心に運用すれば増える可能性がある一方で、相場の下落によって資産が目減りするリスクもあります。元本保証の商品を選べば安全性は高まりますが、利回りは低く、インフレに追いつけない可能性があります。
第二に資金を自由に引き出せない制約があります。原則として60歳までは途中で引き出せず、緊急時に使えない点が一般の貯蓄とは異なります。つまり「老後資金専用」と割り切る必要があり、流動性の低さがデメリットといえます。
第三に運用の知識が必要になるという点です。加入者自身が商品を選ぶ仕組みであるため、投資経験や金融リテラシーが乏しいと、適切な資産配分ができずに損失を抱える可能性があります。会社によっては教育制度を整えていないケースもあり、従業員が「運用を放置してしまう」こともよくあります。
第四に転職や退職時の手続きの煩雑さも挙げられます。企業型DCはポータビリティ(持ち運び)が制度上用意されていますが、iDeCoへの移換や次の勤務先への引き継ぎには期限や手続きがあり、対応を怠ると「自動移換」となり、運用が停止してしまいます。これにより老後資産が非効率になるリスクがあります。
さらに企業にとってもデメリットは存在します。掛金を拠出することで一定のコスト負担が生じるうえ、従業員に運用教育を行う体制整備も必要になります。特に中小企業では制度運営に関する事務負担を重荷と感じるケースも少なくありません。
総じて、企業型確定拠出年金のデメリットは「運用結果が保証されない」「自由に使えない」「知識や手続きが必要」という点に集約されます。制度を有効に活用するには、従業員側の金融リテラシー向上と企業側のサポート体制が不可欠です。