この記事は、整骨院の経営者や採用担当者の方に向けて書かれています。
人材不足や離職率の高さに悩む整骨院業界で、企業型確定拠出年金(DC)を活用することで、採用力と定着率を高める方法をわかりやすく解説します。
福利厚生の充実が求職者の注目を集める今、企業型DCの導入がどのように“人が集まり辞めない職場”づくりに役立つのか、具体的な導入手順や成功事例も交えてご紹介します。
目次
整骨院業界で採用が難しくなっている理由

柔道整復師や受付スタッフの人材不足
近年、整骨院業界では柔道整復師や受付スタッフの人材不足が深刻化しています。
国家資格を持つ柔道整復師の新規取得者数は横ばいか減少傾向にあり、他業種への転職や独立を目指す人も多いため、採用競争が激化しています。
また、受付スタッフも医療事務や他のサービス業と人材の取り合いになっており、求人を出してもなかなか応募が集まらない状況が続いています。
このような背景から、整骨院が優秀な人材を確保するためには、給与や勤務条件だけでなく、福利厚生の充実がますます重要になっています。
独立志向が強く定着しにくい業界構造
整骨院業界は、柔道整復師が独立開業を目指すケースが多いのが特徴です。
そのため、せっかく採用しても数年で退職し、自分の院を開業する人が後を絶ちません。
また、キャリアアップや収入増を求めて他院へ転職する人も多く、定着率の低さが業界全体の課題となっています。
このような業界構造の中で、長く働き続けてもらうためには、給与以外の魅力や将来の安心感を提供することが不可欠です。
特に退職金や老後資産形成といった福利厚生が、スタッフの定着を促す大きな要素となっています。
「安定して働ける福利厚生」が求職者の関心を集めている
最近の求職者は、給与や休日だけでなく「安定して働ける福利厚生」に強い関心を持っています。
特に若手や家庭を持つスタッフは、将来の生活設計や老後の安心を重視する傾向が高まっています。
整骨院業界では、まだ退職金制度や企業年金を導入している院が少ないため、福利厚生を充実させることで他院との差別化が可能です。
企業型確定拠出年金(DC)は、こうした求職者のニーズに応える有力な選択肢として注目されています。
企業型確定拠出年金(DC)とは?

法人が掛金を拠出し、従業員が自分で運用する年金制度
企業型確定拠出年金(DC)は、法人が従業員のために毎月一定額の掛金を拠出し、その資金を従業員自身が運用していく年金制度です。
従業員は、用意された投資信託や定期預金などの運用商品から自分で選択し、将来の退職金や老後資産を積み立てていきます。
この制度は、従業員の自助努力を促しつつ、企業側も福利厚生の一環として導入しやすいのが特徴です。
また、運用成績によって将来受け取れる金額が変動するため、資産形成の意識も高まります。
掛金は全額損金算入、運用益は非課税
企業型DCの大きなメリットの一つは、法人が拠出する掛金が全額損金算入できる点です。
これにより、法人税の節税効果が期待できます。
また、従業員が運用して得た利益(運用益)は、受け取るまで非課税となるため、効率的に資産を増やすことが可能です。
この税制優遇は、企業・従業員双方にとって大きな魅力となっています。
さらに、退職時や老後に一時金または年金として受け取る際も、一定の税制優遇が受けられます。
退職金+老後資産形成を同時に実現できる仕組み
企業型DCは、従業員にとって「退職金」と「老後資産形成」を同時に実現できる画期的な仕組みです。
従来の退職金制度と異なり、積み立てた資産は個人ごとに管理され、転職や退職時にも持ち運びが可能です。
また、運用次第で将来受け取れる金額が増える可能性もあり、従業員のモチベーション向上にもつながります。
このように、企業型DCは現代の多様な働き方やライフプランに対応した柔軟な福利厚生制度として注目されています。
なぜ整骨院に企業型DCが向いているのか

法人化していれば業種を問わず導入可能
企業型DCは、法人化している事業所であれば業種を問わず導入できる制度です。
整骨院も株式会社や医療法人など法人格を持っていれば、他の一般企業と同じように企業型DCを活用できます。
医療・介護業界ではまだ導入事例が少ないため、先行して福利厚生を充実させることで、他院との差別化や採用力の強化につながります。
また、法人化していることで社会保険や各種手当と組み合わせたトータルな福利厚生設計が可能となり、スタッフの満足度向上にも寄与します。
従業員数1名からでも導入できる柔軟性
企業型DCは、従業員数が1名からでも導入できる柔軟性が大きな魅力です。
小規模な整骨院や個人経営から法人化したばかりの院でも、院長自身や少人数のスタッフを対象にスタートできます。
従業員数が増えた場合も、制度を拡大していくことが可能です。
この柔軟性により、規模の大小を問わず、どの整骨院でも導入しやすい点が評価されています。
また、スタッフのライフステージや希望に合わせて掛金や運用方法を選べる点も、働きやすさにつながります。
スタッフに「長く働くほど得をする制度」を提供できる
企業型DCは、在籍期間が長いほど積立額が増える仕組みのため、スタッフにとって「長く働くほど得をする」明確なメリットがあります。
これにより、短期間での離職を防ぎ、定着率の向上が期待できます。
また、将来の退職金や老後資産が“見える化”されることで、スタッフの安心感やモチベーションアップにもつながります。
このような制度を導入することで、整骨院は「長く働きたい」と思われる職場へと進化できます。
採用における企業型DCの効果

求人票に「企業年金制度あり」と記載するだけで応募率アップ
求人票に「企業年金制度あり」「企業型DC導入」と記載するだけで、応募者の目に留まりやすくなります。
特に福利厚生を重視する求職者や、将来の安定を求める若手・中堅層からの応募が増加する傾向があります。
他院との差別化ポイントとしても有効で、同じ給与水準でも福利厚生の充実度で選ばれるケースが増えています。
実際に、企業型DCを導入した整骨院では、求人応募数が大幅に増加した事例も報告されています。
「福利厚生の整った整骨院」として信頼性が高まる
企業型DCを導入することで、院の福利厚生が充実し、求職者や既存スタッフからの信頼性が高まります。
福利厚生がしっかりしている職場は、長く安心して働けるイメージを持たれやすく、採用活動において大きなアドバンテージとなります。
また、スタッフの家族や周囲からも「良い職場」と評価されやすく、院のブランド力向上にもつながります。
このような信頼性は、患者さんからの評価にも波及し、院全体のイメージアップにも貢献します。
若手施術者・受付スタッフから選ばれる職場になる
若手の柔道整復師や受付スタッフは、将来のキャリアや生活設計を重視する傾向が強まっています。
企業型DCを導入することで、若手人材から「長く働きたい」「ここでキャリアを積みたい」と思われる職場づくりが可能です。
また、福利厚生が充実していることで、他院や他業種への転職を防ぎ、優秀な人材の流出を抑える効果も期待できます。
このように、企業型DCは若手人材の採用・定着に大きく貢献する制度です。
| 導入前 | 導入後 |
|---|---|
| 応募数が少ない 福利厚生が弱い |
応募数増加 福利厚生で差別化 |
定着率を高める仕組みとしてのDC

長く勤めるほど積み上がる仕組みでモチベーションUP
企業型DCは、在籍年数が長いほど積立額が増える仕組みのため、スタッフのモチベーション向上に直結します。
「長く働けば働くほど将来の資産が増える」という明確なインセンティブが生まれ、短期離職の抑制にも効果的です。
また、毎年の掛金が積み上がることで、スタッフ自身が自分の将来設計を具体的にイメージしやすくなります。
このような仕組みは、スタッフのやる気や院へのロイヤリティを高め、安定した職場づくりに大きく貢献します。
退職金制度を“見える化”して安心感を提供
従来の退職金制度は、金額や受け取り条件が不透明なことも多く、スタッフにとって分かりづらいものでした。
企業型DCは、個人ごとに積立額や運用状況が“見える化”されているため、スタッフは自分の資産をいつでも確認できます。
この透明性が、将来への安心感や信頼感につながり、長期的な定着を促進します。
また、退職金の受け取り方法も選択肢が多く、ライフプランに合わせた柔軟な対応が可能です。
家庭を持つスタッフにも喜ばれる福利厚生
企業型DCは、家庭を持つスタッフやこれから家庭を築く若手にも大変喜ばれる福利厚生です。
将来の教育資金や住宅購入、老後の生活資金など、人生のさまざまなイベントに備えることができるため、家族からの信頼も高まります。
また、福利厚生が充実している職場は、家族の理解や応援も得やすく、スタッフが安心して長く働ける環境づくりに役立ちます。
このような制度は、院全体の雰囲気やチームワークの向上にもつながります。
企業型DC導入の流れ(整骨院向け)

1. 導入目的を明確にする(採用・定着・節税)
まずは、企業型DCを導入する目的を明確にしましょう。
「採用力の強化」「スタッフの定着率向上」「法人の節税対策」など、院ごとに重視するポイントを整理することで、最適な制度設計が可能になります。
目的が明確であれば、スタッフへの説明や導入後の運用もスムーズに進みます。
また、経営者自身の老後資金準備を目的にするケースも増えています。
2. 対象者(柔整師・受付・トレーナーなど)を整理
次に、企業型DCの対象者を明確にします。
柔道整復師だけでなく、受付スタッフやトレーナー、事務職など、どの職種を対象にするかを決めましょう。
全スタッフを対象にすることで、院全体の一体感や公平感が生まれます。
また、パートやアルバイトも条件によっては対象にできるため、柔軟な設計が可能です。
3. 掛金額と制度内容を設計する
掛金額や拠出方法、運用商品の選択肢など、制度の具体的な内容を設計します。
掛金は月額5,000円から数万円まで幅広く設定でき、業績やスタッフの希望に応じて調整可能です。
また、スタッフごとに掛金を変えることもできるため、役職や勤続年数に応じた設計もおすすめです。
運用商品は金融機関が用意する複数の選択肢から選べます。
4. 金融機関・社労士と連携して導入を進める
企業型DCの導入には、金融機関や社会保険労務士(社労士)との連携が不可欠です。
まずは、制度導入の実績がある金融機関や専門家に相談し、導入手続きや運用サポートを受けましょう。
社労士は、就業規則の整備やスタッフへの説明資料作成など、実務面でのサポートをしてくれます。
専門家の力を借りることで、スムーズかつ安心して導入が進められます。
5. スタッフ説明会を実施し理解を深める
導入が決まったら、スタッフ向けの説明会を実施しましょう。
制度の仕組みやメリット、運用方法などを丁寧に説明し、スタッフの理解と納得を得ることが大切です。
質疑応答の時間を設けることで、不安や疑問を解消し、制度への信頼感を高めることができます。
説明会は金融機関や社労士に依頼することも可能です。
企業型DCの導入時のポイント

社会保険加入法人なら導入がスムーズ
企業型DCは、社会保険に加入している法人であれば、導入手続きが非常にスムーズです。
社会保険の加入状況は、金融機関や社労士とのやり取りの際にも重要な確認ポイントとなります。
社会保険未加入の場合は、まず法人化や社会保険の整備から始める必要がありますが、これを機に福利厚生全体の見直しを行う院も増えています。
社会保険と企業型DCを組み合わせることで、スタッフの安心感や信頼性がさらに高まります。
掛金は業績に合わせて柔軟に設定可能
企業型DCの掛金は、院の業績や経営状況に合わせて柔軟に設定できます。
景気や売上の変動に応じて掛金額を増減できるため、無理のない範囲で福利厚生を充実させることが可能です。
また、スタッフごとに掛金を変えることもでき、役職や勤続年数に応じた設計も実現できます。
この柔軟性が、整骨院の経営にフィットしやすい理由の一つです。
院長や幹部の退職金準備にも活用できる
企業型DCは、スタッフだけでなく院長や幹部の退職金準備にも最適です。
経営者自身も制度の対象者として掛金を積み立てることができ、将来の老後資金や事業承継時の資金準備に役立ちます。
また、経営者が自ら福利厚生を充実させることで、スタッフへの説得力や院全体の一体感も高まります。
経営者・スタッフ双方にメリットがある点が、企業型DCの大きな魅力です。
導入事例:整骨院グループA社の成功例

求人応募数が前年比1.7倍に増加
整骨院グループA社では、企業型DCを導入したことで求人応募数が前年比1.7倍に増加しました。
求人票に「企業年金制度あり」と明記したことで、福利厚生を重視する求職者からの応募が急増。
特に若手の柔道整復師や受付スタッフからの関心が高まり、採用活動が大きく前進しました。
このように、企業型DCは採用力強化に直結する施策として高く評価されています。
中堅スタッフの離職率が大幅改善
導入前は中堅スタッフの離職が課題だったA社ですが、企業型DC導入後は離職率が大幅に改善しました。
「長く働くほど得をする」仕組みがスタッフの定着意欲を高め、キャリアアップや独立志向のスタッフも「もう少しここで頑張ろう」と考えるようになったそうです。
福利厚生の充実が、院の安定経営に大きく寄与しています。
院長の節税と老後資金準備も同時に実現
院長自身も企業型DCの対象者となることで、法人の節税と自身の老後資金準備を同時に実現できました。
掛金が全額損金算入できるため、法人税の負担軽減にもつながり、経営面でも大きなメリットを感じているとのことです。
このように、経営者・スタッフ双方にとって有益な制度であることが、A社の成功の秘訣です。
| 導入前 | 導入後 |
|---|---|
| 応募数が少ない 離職率が高い 院長の老後資金不安 |
応募数1.7倍 離職率大幅改善 院長の老後資金も確保 |
まとめ:企業型DCで人が集まり辞めない整骨院経営へ

採用・定着・節税の三拍子がそろう福利厚生
企業型DCは、採用力の強化、スタッフの定着率向上、法人の節税という三拍子がそろった福利厚生制度です。
整骨院業界で人材確保や離職防止に悩む経営者にとって、導入のメリットは非常に大きいと言えるでしょう。
今後の整骨院経営の新しいスタンダードとして、ぜひ検討してみてください。
「スタッフが安心して働ける職場」が患者満足にもつながる
スタッフが安心して長く働ける職場は、自然とサービスの質も向上し、患者満足度の向上にもつながります。
福利厚生の充実は、院のブランド力や信頼性を高め、地域で選ばれる整骨院づくりの大きな武器となります。
スタッフ・患者・経営者の三方良しを実現するためにも、企業型DCの導入をおすすめします。
企業型DCは整骨院経営の新しいスタンダード
企業型DCは、これからの整骨院経営における新しいスタンダードです。
人材不足や離職率の高さに悩む院こそ、早期導入で他院との差別化を図りましょう。
スタッフの将来を守り、院の成長を支える制度として、企業型DCの活用をぜひご検討ください。









