この記事は、社会保険労務士法人の経営者や採用担当者の方に向けて書かれています。
人材確保や定着が難しくなっている現代において、企業型確定拠出年金(DC)を活用することで、採用力の強化や職員の定着率向上、さらには経営者自身の退職金・節税対策まで実現できる方法を、わかりやすく解説します。
社労士法人が人が集まり辞めない事務所を作るための新しい福利厚生戦略として、企業型DCの導入メリットや具体的な導入手順、成功事例まで網羅的にご紹介します。
目次
社労士法人の採用が難しくなっている現状

近年、社会保険労務士法人における人材採用はますます難易度が高まっています。
特に資格者や実務経験者の採用競争は激化しており、求人を出してもなかなか応募が集まらない、内定を出しても他社に流れてしまうといった課題が多くの法人で見られます。
また、少子高齢化や働き方改革の影響もあり、若手人材の確保や定着が大きな経営課題となっています。
このような状況下で、給与や福利厚生の充実度が採用成功のカギを握る時代になっています。
資格者・経験者の採用競争が激化
社労士法人の採用市場では、資格者や実務経験者の取り合いが激しくなっています。
大手法人や待遇の良い事務所に人材が集中し、中小法人は採用活動で苦戦するケースが増加しています。
また、求職者側も複数の求人を比較し、より条件の良い職場を選ぶ傾向が強まっています。
このため、従来の給与や休日だけでなく、福利厚生やキャリア支援など“プラスα”の魅力が求められるようになっています。
- 資格者の求人倍率が高い
- 経験者は即戦力として人気
- 大手と中小で待遇差が拡大
中小法人では給与・福利厚生で差がつきやすい
中小規模の社労士法人では、大手と比べて給与水準や福利厚生で見劣りしがちです。
そのため、採用活動においては他社にない魅力を打ち出すことが重要です。
特に企業型DCのような新しい福利厚生制度を導入することで、求職者に対して「この事務所は将来も安心して働ける」といった印象を与えることができます。
給与だけでなく、福利厚生の充実度が採用成功の分かれ目となる時代です。
| 大手法人 | 中小法人 |
|---|---|
| 高い給与水準・充実した福利厚生 | 給与・福利厚生で見劣りしやすい |
| ブランド力で応募が集まりやすい | 独自の魅力が必要 |
若手が「安心して働ける事務所」を求める時代へ
若手や子育て世代の求職者は、給与だけでなく「長く安心して働ける環境」を重視する傾向が強まっています。
将来の年金や退職金制度が整っているか、ライフイベントに対応できる柔軟な働き方ができるかなど、福利厚生の質が職場選びの大きなポイントとなっています。
企業型DCのような制度を導入することで、若手人材に「この事務所なら将来も安心」と思ってもらえる環境を提供できます。
- 将来の年金・退職金を重視
- ライフイベントに対応できる職場を希望
- 福利厚生の充実が応募動機に直結
>>社会保険労務士法人に退職金制度は必要?企業型DC・中退共を活用した導入メリット
企業型確定拠出年金(DC)とは?

企業型確定拠出年金(DC)は、法人が従業員のために掛金を拠出し、従業員自身がその資金を運用して将来の年金や退職金を準備する制度です。
従来の退職金制度と異なり、運用方法を自分で選べる自由度の高さや、税制上の優遇措置が大きな特徴です。
社労士法人でも導入しやすく、採用・定着・節税の三拍子がそろう新しい福利厚生制度として注目されています。
法人が掛金を拠出し、職員が自分で運用する年金制度
企業型DCは、法人が毎月一定額の掛金を拠出し、その資金を従業員が自分で運用する仕組みです。
運用商品は投資信託や定期預金などから選択でき、将来の年金や退職金として受け取ることができます。
従業員一人ひとりが自分の資産形成に主体的に関われる点が大きな魅力です。
- 法人が掛金を負担
- 従業員が運用方法を選択
- 将来の年金・退職金として受け取り可能
掛金は全額損金算入、運用益は非課税
企業型DCの最大のメリットの一つが、掛金が全額損金算入できる点です。
また、運用益も非課税で積み立てられるため、効率的な資産形成が可能です。
さらに、掛金は社会保険料の対象外となるため、会社・従業員双方の社会保険料負担を軽減できる場合もあります。
税制優遇を活かした福利厚生として、経営者にも従業員にもメリットがあります。
| 項目 | 企業型DC |
|---|---|
| 掛金の損金算入 | 全額可能 |
| 運用益 | 非課税 |
| 社会保険料 | 負担軽減の可能性 |
退職金+年金の両立を実現できる仕組み
企業型DCは、従来の退職金制度と異なり、年金として分割受取も一時金として一括受取も選択できます。
これにより、従業員は自分のライフプランに合わせて柔軟に資産を受け取ることが可能です。
退職金と年金の“いいとこ取り”ができるため、長期的な安心感を提供できる制度です。
- 一時金・年金の選択が可能
- ライフプランに合わせて受取方法を選べる
- 長期的な資産形成ができる
社労士法人でも導入できる理由

企業型確定拠出年金(DC)は、特定の業種や規模に限定される制度ではありません。
社会保険労務士法人のような士業法人でも、法人化していれば導入が可能です。
また、従業員数が少ない事務所や、専門職・事務職が混在する組織でも柔軟に設計できるため、幅広い社労士法人で活用されています。
この柔軟性が、士業法人の新しい福利厚生制度として注目される理由です。
法人化していれば業種を問わず導入可能
企業型DCは、厚生年金適用事業所であれば業種を問わず導入できます。
社労士法人も法人格を持ち、社会保険に加入していれば、他の一般企業と同様に制度を導入することができます。
士業特有の制約もなく、経営者や従業員の将来設計に役立つ制度として活用できます。
- 業種制限なし
- 厚生年金適用事業所が条件
- 士業法人も導入実績多数
従業員数1名からでも導入できる柔軟な制度
企業型DCは、従業員数が1名からでも導入可能です。
小規模な社労士法人や、経営者のみの法人でも利用できるため、規模に関係なく福利厚生を充実させることができます。
また、将来的に従業員が増えた場合も、柔軟に制度を拡張できる点が魅力です。
- 1名から導入可能
- 小規模法人にも最適
- 将来の拡張も容易
専門職・事務職どちらにも対応できる
社労士法人には、資格者である専門職と、事務職の両方が在籍しています。
企業型DCは、職種や役職に応じて掛金額や制度内容を柔軟に設計できるため、全ての職員に公平な福利厚生を提供できます。
職種ごとに異なるニーズにも対応できる点が、社労士法人にとって大きなメリットです。
- 専門職・事務職ともに対象
- 掛金額の設定も柔軟
- 公平な福利厚生を実現
採用における企業型DCの効果

企業型DCを導入することで、求人票に「企業年金制度あり」と記載できるようになり、応募者の目に留まりやすくなります。
また、士業業界の中でも福利厚生が充実している事務所として信頼感が高まり、若手や子育て世代の応募意欲を引き出すことができます。
採用活動において他社との差別化を図る強力な武器となります。
求人票に「企業年金制度あり」と記載するだけで応募率UP
求人票に「企業年金制度あり」と明記することで、求職者の注目度が大きく向上します。
特に福利厚生を重視する若手や経験者にとって、企業型DCの有無は応募先選びの重要な判断材料となります。
実際に、企業型DC導入後に応募数が増加した事例も多く報告されています。
- 求人票でのアピールポイント増加
- 応募率の向上
- 他社との差別化
士業の中でも福利厚生が充実していると信頼感アップ
士業業界は、一般企業と比べて福利厚生が手薄なイメージを持たれがちです。
その中で企業型DCを導入している事務所は、求職者から「安心して長く働ける職場」として高く評価されます。
信頼感や安心感が採用力の向上につながります。
- 士業の中での差別化
- 信頼感・安心感の向上
- 長期雇用への期待感
若手や子育て世代が安心して働ける環境を提供
企業型DCは、将来の資産形成やライフプラン設計に役立つため、若手や子育て世代の職員にとって大きな魅力となります。
「この事務所なら将来も安心」と思ってもらえることで、応募意欲や定着率の向上が期待できます。
- 若手・子育て世代の応募増加
- 将来設計の安心感
- 長期的なキャリア形成を支援
定着率を高める仕組みとしてのDC

企業型DCは、採用だけでなく職員の定着率向上にも大きな効果を発揮します。
長く働くほど積み上がる制度設計や、退職金の可視化、キャリア形成を支える長期的な安心感が、職員のモチベーション維持と離職防止につながります。
社労士法人の安定経営に欠かせない仕組みです。
「長く働くほど積み上がる制度」でモチベーション向上
企業型DCは、在籍期間が長いほど積立額が増える仕組みです。
これにより、職員は「長く働くほど将来の資産が増える」という実感を持ちやすく、モチベーションの向上や離職防止につながります。
長期雇用を促進するインセンティブとして機能します。
- 長期在籍のインセンティブ
- モチベーションアップ
- 離職率の低下
退職金の仕組みを可視化できる
企業型DCは、従業員ごとに積立状況や運用状況をオンラインで確認できるため、退職金の仕組みが見える化されます。
これにより、職員は自分の将来資産を具体的にイメージでき、安心して働き続けることができます。
- 退職金の見える化
- 将来資産の把握が容易
- 安心感の向上
キャリア形成を支える長期的な安心感を生む
企業型DCは、職員のキャリア形成やライフプラン設計を長期的にサポートします。
将来の資産形成が約束されていることで、安心してキャリアアップやスキル向上に取り組むことができ、事務所全体の成長にもつながります。
- キャリア形成の支援
- 長期的な安心感
- 事務所の成長促進
企業型DC導入の流れ(社労士法人向け)

社労士法人が企業型確定拠出年金(DC)を導入する際は、目的の明確化から制度設計、金融機関との連携、職員説明会まで、いくつかのステップを踏むことが重要です。
各段階で専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ最適な制度導入が実現できます。
ここでは、社労士法人向けの導入プロセスを具体的に解説します。
1. 導入目的を明確にする(採用・定着・節税)
まずは、企業型DCを導入する目的を明確にしましょう。
「採用力の強化」「職員の定着率向上」「経営者・役員の退職金や節税対策」など、法人ごとに重視するポイントを整理することで、最適な制度設計が可能になります。
目的が明確であれば、職員への説明や導入後の運用もスムーズに進みます。
- 採用力強化
- 定着率向上
- 節税・退職金準備
2. 対象者(資格者・事務職・幹部)を整理
次に、制度の対象者を明確にします。
資格者、事務職、幹部社員など、職種や役職ごとに掛金額や制度内容を調整することも可能です。
公平性と柔軟性を両立させることで、全職員が納得できる制度設計が実現します。
- 資格者・事務職・幹部の区分
- 掛金額の調整
- 公平な制度設計
3. 掛金額と制度設計を検討する
掛金額は、法人の業績や組織規模、職員構成に合わせて柔軟に設定できます。
また、掛金の増減や職種ごとの差別化も可能です。
将来の事業計画や人員計画も踏まえ、無理のない範囲で最適な制度設計を行いましょう。
| 職種 | 掛金例(月額) |
|---|---|
| 資格者 | 20,000円 |
| 事務職 | 10,000円 |
| 幹部 | 30,000円 |
4. 金融機関・社労士・税理士と連携して導入
企業型DCの導入には、金融機関や運営管理機関、社労士、税理士などの専門家との連携が不可欠です。
制度設計から手続き、運用開始まで一括してサポートしてくれるパートナーを選ぶことで、導入の手間やリスクを大幅に軽減できます。
- 金融機関の選定
- 専門家との連携
- 一括サポートの活用
5. 職員説明会で理解を深める
導入後は、職員向けの説明会を開催し、制度の仕組みやメリット、運用方法について丁寧に説明しましょう。
職員が制度を正しく理解し、積極的に活用できるようサポートすることが、制度定着のカギとなります。
- 説明会の開催
- 運用方法のレクチャー
- 質疑応答で不安を解消
導入時のポイント

企業型DCを導入する際は、社会保険加入法人であることや、掛金設定の柔軟性、経営者・役員の退職金準備にも活用できる点など、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
これらのポイントを理解し、事前に準備を進めることで、スムーズな導入と運用が可能になります。
社会保険加入法人なら導入がスムーズ
企業型DCは、社会保険(厚生年金)に加入している法人であれば、業種や規模を問わず導入が可能です。
社労士法人もこの条件を満たしていれば、特別な手続きなくスムーズに導入できます。
まずは自社の社会保険加入状況を確認しましょう。
- 社会保険加入が必須条件
- 業種・規模は問わない
- 導入手続きが簡単
掛金は業績や組織規模に合わせて柔軟に設定可能
掛金額は、法人の業績や組織規模、職員構成に応じて柔軟に設定できます。
景気や経営状況に合わせて見直しも可能なため、無理なく長期的に運用できる点が魅力です。
職種や役職ごとに差をつけることもできます。
- 掛金額の柔軟設定
- 経営状況に応じた見直し
- 職種・役職ごとの調整も可能
代表社員・役員の退職金準備にも活用できる
企業型DCは、従業員だけでなく代表社員や役員の退職金準備にも活用できます。
経営者自身の老後資金や節税対策としても有効なため、法人全体の福利厚生強化に役立ちます。
経営者・役員の将来設計にも大きなメリットがあります。
- 経営者・役員も対象
- 退職金・老後資金の準備
- 節税効果も期待
導入事例:社労士法人A社の成功例

実際に企業型DCを導入した社労士法人A社では、求人応募数の増加やスタッフの定着率向上、代表社員の退職金・節税対策の実現など、多くの成果が得られました。
ここでは、A社の具体的な導入効果を紹介します。
求人応募数が1.5倍に増加
企業型DC導入後、求人票に「企業年金制度あり」と記載したことで、応募数が従来の1.5倍に増加しました。
福利厚生の充実が求職者の注目を集め、採用活動が大きく前進しました。
3年以上勤務するスタッフが増加
DC導入により、長期的な資産形成が可能となったことで、3年以上勤務するスタッフの割合が大幅に増加しました。
「長く働くほど得をする」という制度設計が、定着率向上に直結しています。
代表社員の節税・退職金準備も実現
代表社員自身も企業型DCに加入し、退職金準備と節税効果を実感しています。
法人全体の福利厚生強化と経営者の将来設計を両立できる点が、A社の大きな成功要因となりました。
| 導入前 | 導入後 |
|---|---|
| 応募数が少ない | 応募数1.5倍 |
| 離職率が高い | 3年以上勤務者増加 |
| 経営者の退職金準備が困難 | 節税・退職金準備が実現 |
まとめ:企業型DCで“人が集まり辞めない士業法人”へ

企業型確定拠出年金(DC)は、社労士法人の採用力強化・職員定着・経営者の退職金準備・節税対策といった多くのメリットをもたらします。
従来の給与や休日だけでは差別化が難しい時代に、福利厚生の充実は人が集まり辞めない事務所を実現するための新しい経営基盤となります。
今後の人材戦略において、企業型DCの導入は欠かせない選択肢となるでしょう。
採用・定着・節税の三拍子がそろう福利厚生
企業型DCは、採用力の強化、職員の定着率向上、そして経営者・役員の節税や退職金準備という三拍子がそろった福利厚生制度です。
社労士法人の経営課題を一挙に解決できるため、今後ますます導入が進むと予想されます。
他社との差別化や、長期的な組織成長のためにも、早期導入を検討しましょう。
- 採用力アップ
- 定着率向上
- 節税・退職金準備
士業の信頼性を高める長期的な人材戦略
企業型DCの導入は、士業法人としての信頼性や社会的評価を高める長期的な人材戦略です。
福利厚生の充実は、求職者や既存職員だけでなく、クライアントや取引先からの信頼獲得にもつながります。
安定した組織運営と持続的な成長のために、企業型DCを活用した人材戦略を推進しましょう。
- 士業法人のブランド力向上
- クライアントからの信頼獲得
- 持続的な組織成長
企業型DCは社労士法人の新しい経営基盤
企業型DCは、社労士法人にとって単なる福利厚生制度ではなく、経営基盤そのものを強化する新しい仕組みです。
人材の採用・定着・育成を支え、経営者自身の将来設計にも役立つ制度として、今後の士業経営に不可欠な存在となるでしょう。
ぜひこの機会に、企業型DCの導入を前向きにご検討ください。
- 経営基盤の強化
- 人材戦略の中核
- 士業経営の新常識









