確定給付企業年金(DB)が「終了」した場合でも、加入者の権利がすぐに失われることはありません。制度終了とは「これ以上積み立てや給付設計を継続しない」という意味であり、終了時点までに確定している給付は原則として保護されます。ただし、その後の取り扱いや加入者への影響にはいくつか注意点があります。

まず加入者側の影響です。制度終了時点までの勤続や掛金に基づく給付の権利(受給権)は残るため、「今までの分がゼロになる」ということはありません。ただし、原資の扱いや受け取り方法が変更されるケースがあります。多くは、企業年金連合会への移換、他制度への移換、または残余財産の一時金として支給されるなど、制度ごとに定められた方法で取り扱われます。給付設計の見直しにより、将来の年金額が減少したり、受け取り方法が年金→一時金に変わる可能性もあります。
一方、企業側にはより大きな課題があります。確定給付年金は将来の給付を会社が保証する制度のため、制度を終える際には最低積立基準額を満たしているかどうかが重要になります。積立不足がある場合、企業が追加拠出を求められることもあり、財務負担が発生する場合があります。また、制度終了は福利厚生の後退と社員に受け止められやすく、人材定着や採用力にマイナスとなるケースも少なくありません。
この背景から、制度終了と同時に企業型確定拠出年金(企業型DC)へ移行する企業が増えています。DCは会社の負担が明確で財務リスクが小さく、社員にとっても資産形成が継続できるため、制度の空白期間をつくらないという点で現実的な選択肢です。
まとめると、確定給付年金が終了すると「権利は保護されるが、受け取り内容や将来の設計が変わる可能性がある」というのが本質です。企業にとっては、制度終了そのものではなく、「その後にどんな制度で社員の将来を守るか」が問われる局面と言えます。







