退職代行が増えているのは若者が弱いからではない。企業が選ばれなくなっただけだ。

時事ネタ

退職代行を利用する若者が増えている。しかもその約半数が「辞めてすぐ次の転職先を探している」という事実は、多くの経営者や管理職にとって見過ごせない現象だ。3,045人を対象にした調査では、利用者の57.7%が20代。さらに6割以上が1ヶ月以内の転職を望み、7割超が異業種へ流出している。

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つまり、退職代行は“逃げる若者の象徴”ではなく、“企業が見限られた結果”であり、若者のキャリア観が劇的に変化していることの証左だ。

退職理由の上位は「ハラスメント」「人間関係の悪化」「休めない環境」。そして驚くべきは、転職先に求める条件の第1位が給与でも福利厚生でもなく「良好な人間関係」、次いで「ワークライフバランス」である点だ。希望年収は300〜400万円が最多で、「特にこだわらない」という回答も2割近い。彼らは怠けているのではない。精神的な安心、安全な生活、その上で自分らしく働ける環境を最優先しているだけだ。

もはや企業は理解しなければならない。「若者は忍耐が足りない」のではなく「会社に残る合理的理由がない」だけだという現実を。かつてのように、「辞めたら負け」「石の上にも三年」という価値観は崩れた。職場が尊重・成長・安心を提供できなければ、若者は迷わず去る。退職代行の増加は、“若者の弱さ”ではなく、“企業の古さ”を映す鏡にすぎない。

では企業はどうするべきか。答えはシンプルだ。採用を語る前に、「離職したくない会社」を作ることだ。人は会社を辞めているようで、実際には“上司を辞めている”“環境を辞めている”“未来が見えない場所を辞めている”だけだ。つまり、定着率の改善とは人材戦略ではなく、経営そのものの質の改善である。

その中でも、これから確実に重要度を増すのが「安心投資」、すなわち制度的な将来保障の整備だ。特に企業型確定拠出年金(企業型DC)は、人材定着施策として大きな力を発揮する。理由は明確で、企業型DCは“経営者が社員の未来にコミットしている証拠”になるからだ。

給与は今の安心だが、退職金制度は未来の安心。社員が将来に不安を抱えたままでは、どれだけ言葉を尽くしても信頼は生まれない。

採用市場が動きにくく、退職代行が当たり前になりつつある今、企業は問われている。
「あなたの会社は、人生の時間を預けるに足る場所か?」
この問いから逃げない企業だけが、人を惹きつけ、選ばれ続ける。

若者は逃げていない。彼らは未来を選んでいるだけだ。ならば企業も選べばいい。守りではなく、未来に投資する経営を。今からでも間に合う。社員の人生に向き合う企業こそが、これからの時代を勝ち抜く。

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