経営セーフティ共済の注意点について教えてください。

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経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぎ、万が一の資金繰りを支える制度として中小企業基盤整備機構が運営しています。
掛金を全額損金にできるため、節税対策としても人気がありますが、実際には注意すべき点も多くあります。


制度の仕組みを正しく理解していないと、「節税のつもりが逆に税金が増えた」「資金が自由に使えない」といった事態を招くこともあります。

まず最初の注意点は、解約時の課税です。
経営セーフティ共済の掛金は、支払った時点で全額損金算入できるため、その年度の利益を圧縮し節税効果が得られます。
しかし、解約して解約手当金を受け取ると、その金額は「雑収入」として課税されます。
つまり、支払ったときに節税した分が、解約時に利益として戻ってくる仕組みになっているのです。
このため、節税効果は「一時的な繰り延べ」に過ぎず、解約タイミングを誤ると税負担が大きくなる恐れがあります。
特に業績好調で利益が多い年度に解約すると、税金が跳ね上がるケースもあるため、計画的に解約することが大切です。

次に、掛金を40か月未満で解約すると元本割れするという点です。
経営セーフティ共済では、40か月(3年4か月)以上の掛金納付がなければ全額解約はできません。
たとえば30か月で解約すると、掛金総額の80%未満しか戻らず、結果的に元本割れします。
「一時的に資金が必要だから」と途中解約すると損をする仕組みのため、加入する際は3年以上継続できる資金計画を立てておく必要があります。

さらに、積立の上限が800万円までという点も覚えておくべきです。
掛金は月5,000円から20万円まで選べますが、累計800万円に達すると自動的に積立がストップします。

ただし契約自体は継続し、取引先が倒産した際の貸付制度などの権利は保持されます。
再び積み立てたい場合は、一度解約して再加入しなければならず、再加入後は納付月数がゼロからリセットされ、再び40か月を超えなければ解約手当金を受け取れません。

また、流動性が低く、短期の資金需要には向かない点もデメリットです。
この制度はあくまで「万が一の備え」であり、自由に引き出せる預金ではありません。
共済金貸付を利用できるのは、取引先の倒産など一定の条件を満たした場合に限られます。
資金繰りの安定化には役立ちますが、日常的な運転資金や急な出費には不向きです。

そしてもう一つの注意点は、節税目的だけで利用しないことです。
経営セーフティ共済は、企業防衛のための制度であり、短期的な節税スキームではありません。
解約時の課税や資金拘束のリスクを考えると、単なる“節税策”として加入するのは危険です。
「いざという時の資金確保」という本来の目的を意識して、余裕資金の一部を活用することが望ましいです。

経営セーフティ共済は「企業を守る制度」ですが、資金を増やす仕組みではありません。
そのため、資産形成や将来の福利厚生を目的とする場合は、別の仕組みを活用する必要があります。
そこで注目されているのが企業型確定拠出年金(企業型DC)です。
こちらは掛金を全額損金にできる点は共済と同じですが、運用益が非課税で再投資され、複利の力でお金を「育てる」ことができます。
経営セーフティ共済で“会社を守り”、企業型DCで“未来を育てる”。
この2つを上手に組み合わせることが、今の時代の経営者に求められる新しい資金戦略です。

>>企業型DCを今すぐ導入するべき理由と成功事例について

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