「分散投資は意味がない」と言われる理由には、いくつかの誤解と現実的な側面があります。
本来、分散投資はリスクを抑える有効な手法ですが、すべての状況で効果を発揮するわけではありません。
まず一つ目の理由は、分散しすぎるとリターンが平均化してしまうことです。
複数の資産に投資することで大きな損失を避けられる反面、好調な投資先の利益が他の低調な資産に打ち消されることがあります。結果として、全体の成果が「可もなく不可もなく」になり、平均点しか取れないという批判が生まれます。
二つ目は、市場全体が同時に下落する局面では分散の効果が薄れる点です。
本来、分散投資は「株が下がっても債券が上がる」といった資産の動きの違いに頼っています。
しかし、リーマンショックやコロナショックのような世界的な危機では、株式も債券も同時に値下がりすることがあり、「結局どれを持っても下がる」と感じる人が多くなります。これが「分散しても意味がない」と言われる大きな要因の一つです。
三つ目は、形だけの分散で実質的な効果がない場合です。
たとえば米国株インデックスと米国ハイテク株ETFを組み合わせても、値動きがほとんど同じなら、それは「見かけだけの分散」にすぎません。
本来の分散とは、資産クラス(株・債券・不動産など)や地域(日本・米国・新興国など)、通貨など、異なる動きをする対象に分けることを指します。
また、集中投資の方が成功するケースもあることも、分散投資の価値を疑問視する理由です。
たとえばウォーレン・バフェットのような著名投資家は、理解できる企業に集中投資することで莫大な利益を上げています。
そのため「分散は自信のない人がやるもの」と言う人もいますが、これは高度な分析力を持つ一部の人に限った話です。一般の投資家が真似すると、逆にリスクが高まります。
結論として、「分散投資が意味がない」と言われるのは、やり方を誤った分散や短期的な結果だけを見た評価に過ぎません。
長期的に見れば、正しい分散は資産を安定的に育てる最も現実的な方法です。
特に企業型確定拠出年金(DC)のように、長期で積み立てていく制度では、分散投資の効果は確実に発揮されます。
分散は「意味がない」のではなく、「正しく行えば大きな意味がある」投資の基本なのです。