「消えた年金問題」とは、本来もらえるはずの年金記録が紛失・消失したり、誤って別人の記録と統合されてしまったことで、年金が受け取れなかったり、支給額が少なくなったという深刻な問題です。
2007年に発覚した「5000万件の年金記録漏れ」は社会を大きく揺るがせ、「泣き寝入りした人が多い」と今でも語り継がれています。
原因は、社会保険庁(現・日本年金機構)の管理不備でした。
紙台帳・旧制度・基礎年金番号などがバラバラに管理され、転職や結婚による姓名変更、会社の廃業などで記録が正しく統合されなかったのです。
政府は「年金記録回復委員会」を設けて照合を進めましたが、すでに証拠が失われたケースも多く、完全な回復には至りませんでした。
「昔の勤務先がなくなった」「給与明細や保険料の記録が残っていない」といった理由で、記録を証明できず支給を受けられなかった人も少なくありません。
このように、年金制度は“国が運営する安心な仕組み”である一方で、管理ミスや制度変更の影響を完全に避けることはできません。
だからこそ、私たちは「自分の老後資金を自分で守る」という意識を持つ必要があります。
たとえば、日本年金機構の「ねんきんネット」を使えば、自分の加入履歴や納付状況をいつでも確認できます。
不明点があれば年金事務所に問い合わせて、早めに修正を依頼することが大切です。
過去の記録に誤りが見つかれば、5年以内であればさかのぼって支給が受けられることもあります。
そして、もう一つの大切な考え方が「国に任せきりにしない老後準備」です。
それを実現する仕組みが、企業型確定拠出年金(企業型DC)です。
企業型DCでは、会社が毎月掛金を拠出し、従業員自身がその資金を運用します。
掛金は全額損金算入でき、運用益も非課税。
さらに、運用の記録は個人単位で管理されるため、転職しても資産が失われることはありません。
「消えた年金」で泣き寝入りした時代を繰り返さないために、
これからの時代は“自分の年金を自分で育てる”ことが大切です。
企業型DCはまさにその第一歩。
国の制度を補いながら、確実に「自分の未来」を守るための新しい年金の形です。