トップダウンアプローチとボトムアップアプローチは、どちらも投資の分析方法を示す考え方です。
簡単に言えば、「どこから分析を始めるか」という視点の違いです。
トップダウンは“上から下へ”、ボトムアップは“下から上へ”の順に投資対象を選びます。
トップダウンアプローチとは、まず世界や国内の経済全体を俯瞰して、成長が期待できる国や業種を選び、最後に個別銘柄を決めていく方法です。
たとえば、世界的にエネルギー価格が上がりそうだと判断すれば、まずエネルギー関連業界に注目し、その中から有望な企業を探して投資します。
つまり、「マクロ経済→業界→企業」という流れで考えるのがトップダウン型です。
政治動向や金利、為替、景気サイクルといった大きな経済要因を重視するのが特徴で、景気の波にうまく乗る戦略を取りたい投資家に向いています。
一方、ボトムアップアプローチは、経済全体や業界の動向よりも、個別企業の実力に注目します。
業界や国の状況に関係なく、「この会社の経営力や成長性が高い」と判断できれば投資する、というスタイルです。
たとえば、景気が悪くても着実に利益を伸ばしている企業や、独自技術で競争力を持つ企業に投資するケースがこれに当たります。
「企業→業界→経済」という逆の視点で分析するのがボトムアップ型で、企業分析や財務データを重視する投資家に多く採用されています。
たとえるなら、トップダウンは「森を見てから木を選ぶ」方法、ボトムアップは「木を見てから森全体を考える」方法です。
前者は経済全体の流れに乗る戦略で、後者は個々の企業の強さを見抜く戦略といえます。
トップダウンアプローチは景気や政策の変化に強く、短中期のトレンド投資に適しています。
一方、ボトムアップアプローチは企業価値に基づく長期投資に向いており、いわゆる「バリュー投資」や「成長株投資」にも通じます。
多くの投資家は、どちらか一方ではなく両方を組み合わせて使っています。
まずトップダウンで有望な分野を絞り込み、その中でボトムアップで良い企業を選ぶ、というのが理想的なバランスです。
経済の波と企業の力、その両方を見極めることが、安定的な投資成果につながるのです。