確定給付企業年金(DB)は、基本的に元本割れの心配はありません。
なぜなら、将来の給付額が「企業によってあらかじめ保証されている」制度だからです。
運用の成績が悪くなっても、加入者である社員の受け取る金額が減ることは原則ありません。
確定給付年金は、企業が「退職後に○○円支払う」と約束した給付額(ベネフィット)を基準に設計されています。
そのため、企業は毎年、将来支払うべき年金額に見合った資産を積み立てて運用しています。
もし運用が想定より悪くなった場合は、その不足分を企業が追加拠出して補う義務があります。
つまり、運用リスクを負うのは企業側であり、社員個人の資産が減ることはない仕組みになっています。
たとえば、企業が設定した運用利回りを下回ってしまっても、企業が補填することで予定された給付額が確保されます。
そのため、確定給付年金の加入者が「元本割れして退職金が減った」ということは基本的に起こりません。
むしろ、長期的に安定した年金を受け取れる点が、この制度の最大の特徴です。
ただし、例外的に注意すべきケースもあります。
企業が経営破綻し、年金制度を維持できなくなった場合や、年金資産が他の債権者に優先して守られない仕組みの場合には、給付が減額されるリスクがあります。
このような場合には「企業年金連合会」が引き継ぎ、一定の年金が支給される仕組みがありますが、給付額が減ることもあります。
つまり、通常の運用では元本割れの心配はありませんが、**企業の存続リスク**が間接的な注意点として残ります。
一方で、確定拠出年金(DC)は仕組みが異なります。
こちらは企業が拠出した掛金を社員本人が運用するため、運用成績によって増えることもあれば減ることもあります。
つまり、元本割れの可能性があるのは確定拠出年金の方です。
確定給付年金は「企業が守る安定型」、確定拠出年金は「自分で育てる投資型」。
どちらを採用するかは企業の方針や社員層によって異なりますが、安定を求めるなら確定給付年金、成長性を重視するなら確定拠出年金が選ばれる傾向にあります。