確定拠出年金(DC)と確定給付年金(DB)は、どちらも企業が従業員の老後資金を準備するための制度ですが、将来の受け取り額が誰の責任で決まるかという点が大きく異なります。
一言でいえば、確定拠出年金は「掛金が確定」、確定給付年金は「給付が確定」している制度です。
確定拠出年金(Defined Contribution)は、企業が毎月一定の掛金を積み立て、従業員自身がその資金を運用します。
将来の受取額は、運用成績によって増減し、運用が上手くいけば資産が増え、逆に損失が出ることもあります。
つまり、運用リスクを負うのは従業員本人です。
企業にとっては、掛金が固定されているため、将来的な負担が明確で経営リスクを抑えられるというメリットがあります。
また、掛金は全額損金算入でき、運用益も非課税、受け取り時も優遇税制が適用されるなど、税制上のメリットも大きい制度です。
このため、従業員に「自分の年金を自分で育てる意識」を持たせる仕組みとしても注目されています。
一方の確定給付年金(Defined Benefit)は、退職後に受け取る年金額があらかじめ制度で定められており、たとえば「勤続年数×一定率×最終給与額」といった計算式で給付額が決まります。
運用や積立の責任は企業が負うため、運用リスクを負うのは企業側です。
もし運用がうまくいかず資産が不足した場合、企業が追加で拠出して給付を保証します。
従業員にとっては、将来の受け取り額が明確で安心感がある反面、企業側にとっては負担が重く、制度運営コストが高くなる傾向があります。
つまり、確定拠出年金は「自分で運用する投資型の年金」、確定給付年金は「企業が保証する安定型の年金」と言えます。
日本ではバブル崩壊以降、企業の財務リスクを抑える動きから、確定給付年金から確定拠出年金へ移行する企業が増えました。
特に中小企業では、将来の負担を固定できる確定拠出年金を導入するケースが年々増加しています。
さらに近年は、企業型確定拠出年金(企業型DC)が注目されています。
企業型DCは、掛金を全額損金にできるうえ、運用益が非課税、しかも社長や役員も加入可能です。
社員にとっては老後資金を“複利で育てる”チャンスとなり、経営者にとっては節税しながら退職金を準備できる仕組みです。
確定給付年金が「保証の時代」なら、確定拠出年金は「自分で育てる時代」。
これからの企業には、社員の将来と会社の財務の両方を守る制度設計が求められています。