iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)は、節税しながら老後資産を作ることができる制度として人気がありますが、実は注意すべき欠点もいくつかあります。仕組みを理解せずに始めると「思っていたより使いにくい」と感じる人も多いので、デメリットを正しく理解することが大切です。
まず、最大の欠点は60歳まで原則引き出せないことです。どんな理由があっても途中で解約して現金化することはできません。住宅購入や教育費、病気などでお金が必要になっても、iDeCoの資金は老後までロックされます。つまり、生活資金や緊急資金とは完全に分けて考える必要があります。余裕のない状態で始めると「貯金ができなくなった」と後悔するケースもあります。
次に、iDeCoには手数料がかかります。口座開設時におよそ2,800円、さらに毎月171円〜450円ほどの管理手数料がかかるため、少額積立では手数料の割合が高くなり、利回りに影響します。特に定期預金のような低リスク商品を選ぶ場合、運用益よりも手数料の方が大きくなり、結果的に元本割れすることもあります。
また、運用次第では元本割れするリスクがある点も忘れてはいけません。iDeCoは定期預金などの安全商品も選べますが、長期的に増やすには投資信託を選ぶのが一般的です。しかし投資信託には値動きがあり、タイミングによっては元本を下回ることもあります。投資に慣れていない人や、値下がりに不安を感じる人には向かない制度といえます。
さらに、掛金の変更や停止に制限がある点も不便です。掛金額は年1回しか変更できず、積立を止めたい場合も手続きが必要です。ライフスタイルが変わりやすい人や収入が不安定な人にとっては、この柔軟性の低さが負担になることがあります。
また、節税効果にも限界があります。iDeCoのメリットは掛金の全額所得控除ですが、もともと所得が少なく税金をほとんど払っていない人は節税の恩恵を受けにくいです。たとえば、専業主婦やパート勤務、赤字経営の個人事業主などは、iDeCoよりも新NISAなどの方が有利なケースもあります。
そして、意外と見落とされがちなのが受け取り時の税金です。iDeCoは受け取るときに「退職所得控除」または「公的年金等控除」が使えますが、控除額を超えると課税されます。退職金や年金との受け取り時期が重なると、思ったより税金が引かれることもあるので注意が必要です。
このように、iDeCoの欠点は、①60歳まで引き出せない、②手数料がかかる、③元本保証がない、④掛金変更が柔軟でない、⑤節税効果に限界がある、⑥受け取り時に課税される、という6点に集約されます。長期運用が前提の制度であることを理解したうえで、余裕資金でコツコツ続けるのが基本です。
ただし、経営者や法人役員の場合は、iDeCoよりも企業型確定拠出年金(DC)を導入した方が圧倒的に有利です。企業型DCなら掛金を会社の経費(損金)として計上でき、役員退職金の準備にも使えます。節税効果はiDeCoの比ではなく、運用益も非課税です。iDeCoが「個人の節税制度」だとすれば、企業型DCは「会社と経営者の資産形成を両立できる制度」といえるでしょう。