特定退職金共済(特退共)の途中解約はどうすればいいですか?

特定退職金共済(特退共)は、中小企業が従業員の退職金を外部に積み立てる制度で、民間の生命保険会社や共済団体が運営しています。掛金は会社が負担し、従業員の退職時や死亡時に共済金として支給される仕組みですが、経営環境の変化や資金繰りの都合で「途中解約したい」と考えるケースもあります。その場合の手続きや注意点を整理してみましょう。

まず、解約を行う主体は「企業」です。契約者はあくまで法人や個人事業主であり、従業員本人が直接解約することはできません。したがって、解約を検討する場合は、契約先の保険会社や共済団体に連絡し、所定の解約申込書類を提出する必要があります。手続きが受理されると、掛金の納付は停止され、解約返戻金が支給されることになります。

ただし、解約返戻金には注意が必要です。特退共は「長期加入を前提とした制度」であるため、短期間で解約すると返戻金が掛金総額を下回ることがあります。特に加入から数年以内に解約すると「元本割れ」になるリスクが高く、掛けた金額の全額が戻らない点に留意しなければなりません。逆に長期加入を続けるほど返戻率は改善し、退職金としての機能が安定していきます。

また、従業員がすでに退職している場合や、死亡・高度障害といった給付事由が発生している場合は「解約」ではなく「共済金の支給」として処理されるため、返戻金ではなく退職金相当額が支給されます。この点を混同しないように注意が必要です。

さらに、途中解約をすると制度そのものが終了してしまうため、従業員の退職金制度がなくなってしまいます。福利厚生の低下や従業員の不満につながる可能性があるため、会社としては十分な説明や代替制度の検討が求められます。たとえば、中退共や企業型確定拠出年金(DC)など、別の退職金制度に移行することで従業員の安心感を保つことが可能です。

まとめると、特退共の途中解約を行うには、契約者である企業が運営団体に申請を行い、解約返戻金を受け取る流れとなります。ただし、短期での解約は元本割れのリスクがあること、制度終了による従業員への影響が大きいことから、安易に解約するのは避けるべきです。

どうしても必要な場合は、解約返戻金の額を確認したうえで、別の退職金制度への移行を含めた検討を行うことが望ましいといえるでしょう。

>>特定退職金共済制度の仕組みと掛金シミュレーション完全ガイド
>>企業型DCを今すぐ導入するべき理由と成功事例について