特定退職金共済制度は、中小企業が従業員の退職金を外部積立で準備できる仕組みで、民間の生命保険会社や共済団体が運営しています。
会社が掛金を拠出し、従業員が退職する際に共済金が支給される制度ですが、転職や退職などによって勤務先が変わった場合、「それまで積み立てた掛金はどうなるのか?」「別の勤務先でまた加入した場合に通算できるのか?」という疑問を持たれる方も少なくありません。
結論からいえば、特定退職金共済制度には「中退共」のような全国統一型の通算制度は基本的にありません。つまり、同じ会社に在籍している期間に積み立てた掛金はその会社での勤務実績に紐づき、別の会社に転職したからといって自動的に通算される仕組みはないのです。
例えば、A社で特定退職金共済に加入して5年勤務し、その後B社に転職して再び別の特定退職金共済に加入した場合、A社での掛金期間とB社での掛金期間は「別々に管理」されます。そのため、A社退職時に支給された共済金はそこで完結し、B社での加入分は新規に積み立てが始まることになります。
ただし、同じ保険会社や共済団体が運営する制度で、かつ契約の移換が認められる場合には「継続扱い」として掛金を引き継げるケースがあります。これを実務上「通算」と呼ぶこともありますが、必ずしもすべてのケースで可能ではなく、制度ごとにルールが異なります。
生命保険会社が提供する特定退職金共済の多くは「事業所単位」での契約となるため、会社が変わると新規加入扱いになるのが一般的です。
また、従業員本人が掛金を拠出する制度ではないため、個人が任意で「前職の積立分を次の職場に持ち越す」といったことはできません。あくまで契約主体は企業であり、従業員個人の通算管理は想定されていないのです。
その点、中退共(中小企業退職金共済)は全国統一制度であり、転職先の会社が中退共に加入していれば前職分の掛金を通算できる仕組みがあります。したがって、通算性を重視する場合は中退共の方が有利だといえます。
まとめると、特定退職金共済制度は原則として「通算不可」であり、会社ごとの加入実績が独立して扱われます。ただし、同一の共済団体や保険会社内で移換制度が用意されている場合には継続的な扱いが可能な場合もあるため、契約先に確認することが必要です。
転職や退職を見据えて退職金制度を選ぶ際には、通算制度の有無を考慮し、中退共や企業型確定拠出年金(DC)などと比較して検討するのが賢明といえるでしょう。
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