企業型確定拠出年金のスイッチングを暴落後にどう考えるべきか?

確定拠出年金(DC)における「スイッチング」とは、すでに運用している資産を他の運用商品に移し替えることを指します。

掛金の配分変更が「これから買う商品をどう振り分けるか」なのに対し、スイッチングは「すでに保有している資産を売却して他に乗り換える」という点で大きな違いがあります。

企業型確定拠出年金

では、市場が大きく暴落した後にスイッチングをすべきかどうか。これは多くの加入者が悩むテーマです。

結論から言えば、暴落直後に慌ててスイッチングすると逆効果になるリスクが高いといえます。理由は2つあります。

1つ目は、暴落後にスイッチングすると「安値で売って高値で買う」行為になりやすいことです。株式やリスク資産を大きく減らして元本保証型や債券に切り替えると、その時点で損失が確定してしまいます。市場が時間をかけて回復したときに、そのリターンを享受できなくなってしまうのです。

実際、過去のリーマンショックやコロナショックでも、暴落時に売却した人は大きな損を確定し、その後の回復局面に乗れなかったケースが多く見られました。

2つ目は、DCが本来「長期・積立・分散」を前提とした制度であることです。20年、30年単位で積み立てを行う仕組みであるため、一時的な下落は想定の範囲内と考えるべきです。

むしろ暴落局面では掛金による新規購入分が「安く買える」ことにつながり、長期的には有利に働く可能性があります。これがいわゆるドルコスト平均法の効果です。

もちろん、暴落をきっかけに「自分のリスク許容度と商品構成が合っていなかった」と気づいた場合は、今後の掛金配分を調整したり、段階的にスイッチングするのは有効です。

たとえば、株式比率が高すぎて値動きに耐えられないと感じたなら、今後の配分を見直して債券や定期預金の割合を増やす、といった調整は合理的です。ただし、すでに大きく値下がりした資産を慌てて売るのではなく、時間をかけてバランスを整えるのが望ましいといえます。

まとめると、暴落後にDCでスイッチングを考える際は、①損失確定のリスクを理解すること、②DCの本質が長期投資にあること、③必要であれば今後の掛金配分を見直すこと、が重要です。

短期的な感情で判断せず、長期の運用計画に基づいて冷静に対応することが、最終的に老後資産を大きく育てる近道となります。

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