小規模企業共済のデメリットについて教えてください。

小規模企業共済の大きな特徴のひとつに、積み立てた掛金を担保にして低利で資金を借りられる「貸付制度」があります。事業資金や生活資金が必要になった際にスピーディーに利用できる点は経営者にとって心強いメリットですが、一方でいくつかのデメリットも存在します。

これを理解せずに利用すると、思わぬ不利益につながる可能性があるため注意が必要です。

参考:小規模企業共済(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)

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第一に、借入可能額が積立額に依存する点です。小規模企業共済の貸付は、これまで積み立ててきた掛金を担保にしているため、積立額が少ないうちは大きな資金を借りることができません。例えば、加入して間もない人や掛金を低額で設定している人は、必要な金額に届かないケースがあります。

銀行融資のように事業計画や将来性を評価して貸付枠が広がるわけではなく、あくまで「積立実績の範囲内」でしか利用できないのが制約です。

第二に、利息や返済義務があることです。小規模企業共済の貸付は市中金利より低めに設定されているとはいえ、無利子ではありません。さらに、返済は元利均等返済が基本であり、返済負担が資金繰りを圧迫することもあります。

特に経営が不安定な時期に利用すると、かえって返済が重荷になり、共済本来の「退職金制度」としての目的が損なわれる恐れもあります。

第三に、解約時の共済金が減額される可能性があります。貸付を利用した状態で共済を解約すると、解約手当金や共済金から借入残高が差し引かれます。そのため、将来的に受け取るはずだった退職金が減ってしまうリスクがあるのです。

「退職金を積み立てている」という安心感を得るために加入しているにもかかわらず、結果的に受取額が減ることは大きなデメリットと言えます。

第四に、借入が安易に利用されやすい点も注意です。共済の積立金を担保に簡単に借りられる仕組みのため、「必要だから」と繰り返し借りてしまい、返済と借入を繰り返すうちに将来の退職金が目減りするという悪循環に陥るケースもあります。これは本来の目的である「老後の備え」を損なう行為になりかねません。

最後に、使途制限や柔軟性の低さも挙げられます。小規模企業共済の貸付は事業資金や生活資金など幅広く利用できる一方で、返済期間や利率は制度で固定されており、銀行融資のように柔軟に条件交渉ができるわけではありません。より自由度の高い資金調達を求める場合には物足りないと感じることもあります。

まとめると、小規模企業共済の貸付は「積立実績に基づいて低利で資金を借りられる」という利点がある反面、①借入額が限られる、②利息と返済負担がある、③将来の退職金が減るリスク、④安易に借りやすい仕組み、⑤条件の柔軟性が低い、というデメリットがあります。利用する際には「退職金を減らしてでも今資金を得る価値があるのか」を冷静に判断することが重要です。

>>企業型確定拠出年金と小規模企業共済の違いを徹底比較

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