積立投資の代表的な方法として知られるのが「ドルコスト平均法」と「バリュー平均法」です。どちらも複数回に分けて投資を行い、リスクを抑えながら資産形成を目指す点では共通していますが、投資の考え方や運用の仕組みは大きく異なります。
ドルコスト平均法は「毎回一定額を定期的に投資する方法」です。例えば、毎月1万円ずつ投資信託を購入すると、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く購入することになります。その結果、長期的に購入単価が平均化され、相場の変動リスクを抑えることができます。
投資家が相場のタイミングを気にせず自動的に投資を続けられる点が特徴で、確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)などの積立制度でも自然に取り入れられています。初心者でも継続しやすい「シンプルな投資法」といえるでしょう。
一方、バリュー平均法は「資産価値の目標額をあらかじめ設定し、その金額との差額を投資または売却で調整する方法」です。例えば、1年目の目標額を10万円、2年目を20万円、3年目を30万円と設定した場合、実際の運用残高が目標を下回っていれば不足分を追加投資し、逆に目標を上回っていれば一部を売却します。こうすることで、常に資産を一定の成長軌道に乗せることができます。
この違いから、両者の性質は大きく異なります。ドルコスト平均法は「投資額が一定で、結果として保有資産は相場次第で変動する」のに対し、バリュー平均法は「保有資産額を一定の成長カーブに近づけるため、投資額が変動する」という特徴があります。
メリットを比較すると、ドルコスト平均法は投資行動が自動化されており、精神的にも手間の面でも楽に続けられる点が強みです。ただし、相場が右肩上がりのときには、一括投資やバリュー平均法に比べてリターンが劣ることがあります。
バリュー平均法は下落局面で多く買い増し、上昇局面で売却するため、理論的には高いリターンを得られる可能性がありますが、投資額が不安定になりやすく、大きな資金余力や管理の手間が必要です。
また、心理面でも違いがあります。ドルコスト平均法は「買い続けるだけ」なので感情に左右されにくく、初心者向きです。対してバリュー平均法は「値上がりしたら売却する」「下落したら多く買う」という行動をとるため、投資経験や冷静な判断力が求められます。
まとめると、ドルコスト平均法は「一定額をコツコツ投資してリスクを平準化する方法」、バリュー平均法は「資産の目標額に合わせて投資額を調整し、効率的な資産形成を狙う方法」です。
確定拠出年金のような制度にはドルコスト平均法が組み込まれており、多くの人に適したシンプルな手法といえます。一方で、資金管理に余裕があり能動的に運用できる投資家にとっては、バリュー平均法が有効に機能する可能性があります。