ドルコスト平均法とナンピン買いは、どちらも「複数回に分けて投資する」点では似ていますが、その仕組みや目的はまったく異なります。誤解して同じように扱ってしまうと、投資判断を誤る可能性があるため違いを正しく理解することが大切です。
まず、ドルコスト平均法とは「一定額を定期的に投資する方法」です。株式や投資信託の価格が高いときには少ない口数しか買えず、安いときには多くの口数を買えるため、長期的に購入単価が平準化されます。価格変動リスクを抑えながら資産を積み立てることが目的で、特に確定拠出年金(DC)やiDeCoといった制度では自然にこの手法が実践されています。長期投資・積立投資の基本的な考え方であり、安定した資産形成を目指す人に向いた手法です。
一方、ナンピン買いは「価格が下落したときに追加購入して平均取得単価を下げる方法」です。例えば、株を1000円で買った後に800円に下がった場合、さらに追加で買えば平均購入単価を下げられます。価格が再び上昇すれば損益分岐点を早く超えられるという狙いがあります。
ただし、下落が続けば資産がどんどん目減りし、損失が膨らむリスクがあります。ナンピン買いは短期的な価格回復を期待する「逆張り戦略」であり、対象を誤ると大きな損失を抱える可能性が高いのが特徴です。
つまり、ドルコスト平均法は「計画的・長期的・自動的」に投資する仕組みであり、相場に依存せずコツコツ積み立てる方法です。これに対してナンピン買いは「下落相場で損失回避を狙う一時的な戦略」であり、むしろ相場に振り回されやすい方法です。
また、心理面にも大きな違いがあります。ドルコスト平均法はあらかじめルールを決めて定期的に投資するため、投資家の感情に左右されにくく、初心者でも続けやすい仕組みです。反対にナンピン買いは「値下がりしている銘柄をあえて買い増す」ため、強い心理的負担が伴い、冷静な判断を欠くと危険です。
確定拠出年金や長期の老後資産形成には、ナンピン買いよりもドルコスト平均法の方が圧倒的に適しています。なぜなら、DCのように数十年単位で積み立てる制度では、相場の上下動を自然に利用でき、リスクを分散しながら複利効果を最大限に活かせるからです。
まとめると、ドルコスト平均法は「長期的にリスクを抑えて資産形成する手法」、ナンピン買いは「下落時に追加購入して平均取得単価を下げる短期戦略」といえます。表面的には似ていても、本質的には真逆の考え方であり、特に退職金や老後資産づくりにはドルコスト平均法が適していると理解しておくことが重要です。