建設業退職金共済手帳(共済手帳)は、建設業退職金共済制度(建退共)に加入した労働者一人ひとりに交付される大切な手帳です。この手帳に事業主が購入した「共済証紙」を働いた日数に応じて貼付していくことで、退職金の積立記録が残り、退職時に受け取る退職金額の基礎となります。では、この共済手帳はどこで、どのようにしてもらえるのでしょうか。
参考:建設業退職金共済(独立行政法人 勤労者退職金共済機構)
共済手帳は労働者が自ら窓口に行って受け取るものではなく、事業主が建退共に加入手続きを行う際に、本部(独立行政法人 勤労者退職金共済機構)から事業主へ交付され、それを通じて労働者本人に渡される仕組みです。事業主は、各都道府県の建設業協会、商工会議所、建設業団体、あるいは金融機関(銀行・信用金庫など)の窓口を通じて加入申込書を提出し、加入が承認されると労働者ごとに共済手帳が発行されます。
一度交付された共済手帳は、転職や現場の移動があっても引き続き利用できます。新しい会社が建退共に加入していれば、事業主が証紙を購入して手帳に貼付し、退職金記録は途切れずに積み上げられます。建設業界のように人の出入りが多い業種において、労働者の将来を支える安心材料となる仕組みです。
ただし注意が必要なのは、加入自体が義務ではない点です。もし勤務先が建退共に加入していなければ、共済手帳は交付されず、退職金の積立も行われません。また、手帳を紛失した場合は事業主を通じて再交付を申請する必要があります。労働者本人が大切に保管し、定期的に記録を確認することが将来の受給額を守ることにつながります。
一方で、より柔軟で節税効果が高い制度として注目されているのが企業型確定拠出年金(企業型DC)です。建退共が建設業の現場労働者に特化した制度であるのに対し、企業型DCは業種を問わず導入可能で、従業員だけでなく経営者や役員も加入できます。
掛金は全額非課税、運用益も非課税、受け取り時にも税制優遇があるため、効率的な資産形成を実現できます。さらに、資産は労働者本人の名義で積み立てられるため「制度が途切れる不安」もなく、自分の将来を自分で守れるのが特徴です。
まとめると、建設業退職金共済手帳は、事業主が加入手続きを行った際に建退共本部から交付され、会社をまたいで退職金を通算できる便利な仕組みです。しかし、より広く、そして経営者自身も含めて老後資産形成を確実に進めたいなら、企業型DCという選択肢の方が優れているといえるでしょう。