小規模企業共済は、中小企業の社長や役員、個人事業主が加入できる「経営者のための退職金制度」であり、掛金は全額所得控除の対象となるため、実質的には掛け始めた瞬間から節税効果が生まれます。
したがって「元が取れるかどうか」を考える際には、①積立額に対する解約・共済金の受取額、②掛金を払ったときの節税効果、この二つを合わせて考える必要があります。
まず解約返戻金の観点から見てみましょう。小規模企業共済は20年以上の長期積立を前提に設計されているため、加入から短期間(特に20年未満)で任意解約した場合には、受け取れる金額が掛金の総額を下回り「元割れ」することがあります。
例えば10年で任意解約すると、掛金総額の8割程度しか戻らないケースがあります。しかし、20年以上掛け続けて退職や廃業を理由に共済金を受け取れば、元本を上回り、さらに退職所得控除が使えるため税負担も非常に軽くなります。
この意味で「元が取れる」のは概ね20年以上続けた場合といえるでしょう。
次に節税効果を考えます。掛金は全額所得控除の対象となるため、課税所得が500万円、税率30%の経営者が月額5万円(年間60万円)を掛けると、毎年約18万円の節税効果が得られます。
10年間で180万円の税負担が軽くなるため、仮に10年で任意解約して元本割れが起きても、節税効果を含めれば「実質的には得をしている」ケースが多いのです。
つまり、税制メリットを考えれば、掛け始めた瞬間から「元が取れる仕組み」になっているといえます。
さらに、小規模企業共済には貸付制度もあり、掛金の範囲内で低利融資を受けられるため、資金繰りに困ったときに役立ちます。これも経営者にとっては大きな実利であり、制度のメリットのひとつです。
結論として、「小規模企業共済は何年で元が取れるか?」を整理すると、任意解約のみを考えれば20年以上積み立てることで元本超えとなり、実質的に元が取れます。
ただし、節税効果を加味すれば加入初年度からすでに利益が出ていると考えられるため、実際には掛けた時点で元が取れる制度といえます。したがって、短期で解約せず長期で続けるほどメリットが大きくなり、老後資金準備において非常に有効な仕組みです。