中小企業退職金共済制度(中退共)は、国が中小企業の退職金制度を支援するために運営している公的制度です。事業主が毎月掛金を負担し、その積立金が従業員の退職金として支給されます。従業員本人に掛金負担はなく、全額を会社が拠出する仕組みです。では、この掛金は「いくら」なのかという点ですが、制度上は範囲と刻み幅があらかじめ決められています。
掛金は月額5,000円から30,000円までの範囲で設定できます。ただし単に「5,000円刻み」ではなく、細かく刻み方が分かれています。具体的には、5,000円から10,000円までは1,000円刻みで選べるため、5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、10,000円といった設定が可能です。
そして10,000円を超える部分については2,000円刻みとなっており、12,000円、14,000円、16,000円……といった形で増やしていくことができます。最終的に上限は30,000円であり、この範囲内で事業主が従業員ごとに金額を決めます。
この掛金額は、従業員の勤続年数や役職、また会社の財務状況に応じて変更することも可能です。例えば、入社時には5,000円でスタートし、勤続年数が増えるにつれて掛金を1万円、2万円と引き上げる、といった運用もできます。逆に経営状況が厳しいときには一時的に減額することも認められています。
積立額のイメージを示すと、月額5,000円で30年間積み立てれば総額180万円、月額30,000円で30年間積み立てれば総額1,080万円となります。さらに中退共は国が運営しているため利息や運用益が加わり、退職時に支給される金額は掛金総額よりも多くなる仕組みです。
従業員にとっては安定した退職金を準備できる安心感があり、企業にとっても人材確保や定着率向上に役立つ福利厚生制度となります。
加えて、事業主が拠出する掛金は法人であれば全額損金、個人事業であれば必要経費として扱えるため、税務上のメリットも大きい点が特徴です。
結論として、中小企業退職金共済制度の掛金は月額5,000円から30,000円までの範囲で、5,000円から10,000円までは1,000円刻み、それ以上は2,000円刻みで設定できます。従業員に負担はなく、全額を会社が拠出する仕組みであり、退職金制度が整っていない中小企業にとって有効な選択肢となる制度です。