企業型確定拠出年金は、在職中は会社が掛金を拠出し従業員が運用していく退職金制度ですが、退職や転職をするとその会社の制度には加入できなくなります。
その際に必要になるのが「移管手続き」です。もしこの移管を行わずに放置してしまうと、資産は自動的に「国民年金基金連合会」に移されることになります。これを「自動移換」と呼びます。
自動移換になると、資産は現金として保管され、運用は一切行われません。つまり、せっかく長年積み立ててきたお金を増やす機会を失ってしまうのです。
しかも保管中は毎月管理手数料が差し引かれるため、資産は少しずつ減っていきます。資産が守られるどころか目減りしていくという点は、大きなデメリットと言えるでしょう。
さらに大きな問題は、自動移換されている期間は「加入期間」としてカウントされないことです。確定拠出年金を受け取るためには、原則として通算10年以上の加入期間が必要とされています。自動移換の状態が長引くと加入年数が積み上がらず、将来受け取り開始できる年齢が繰り下がってしまう恐れがあります。これは老後資金計画全体に影響を及ぼす深刻な問題となりかねません。
また、将来受け取る際の手続きにも不都合が生じます。自動移換のまま放置していると、60歳以降に資産を受け取ろうとしたときに改めて移管や確認の手続きをしなければならず、必要書類も複雑になり、受け取りが遅れる可能性があります。
つまり、放置していても資産そのものが消えてなくなるわけではありませんが、増えることはなく、むしろ減ってしまい、さらに将来の受け取り条件が不利になるという二重の不利益を被るのです。
結論として、企業型確定拠出年金を移管しないで放置すると、自動移換となり資産は運用されずに手数料で減少し、加入期間としても扱われないため将来の受給に不利な影響が出ます。
したがって、退職や転職をした際には、必ずiDeCoや転職先の企業型DCに速やかに移管手続きを行うことが重要です。これにより資産を守り、効率的に老後資金を育て続けることができます。