企業型確定拠出年金(企業型DC)は、基本的には会社が従業員のために掛金を拠出する制度です。つまり、退職金制度や福利厚生の一環として企業が負担する仕組みであり、従業員が自分の給与から直接拠出する必要はありません。
毎月の掛金は会社があらかじめ決めた額を従業員ごとの口座に積み立て、その資産を従業員本人が選んだ商品で運用していきます。この「会社が拠出する」という仕組みが、確定拠出年金の「企業型」と呼ばれるゆえんです。
ただし、制度の設計によっては従業員が追加で掛金を負担することもあります。代表的なものが「マッチング拠出」と「選択制確定拠出年金」です。マッチング拠出では、会社が拠出する金額に加えて従業員も自分の給与から一定額を上乗せできる仕組みになっています。
例えば会社が月1万円を掛金として出している場合、従業員がさらに自分で1万円を拠出すれば、合計2万円を老後資金として積み立てられることになります。もちろん、拠出できる上限は法律で決まっており、会社掛金を超えることはできません。
一方の選択制確定拠出年金は、給与の一部を現金で受け取るか、掛金として積み立てるかを従業員が選べる制度です。この場合、見かけ上は会社が掛金を負担している形ですが、実際には従業員が給与の一部を老後資金に回すかどうかを選んでいるという性格を持っています。
そのため、厳密には「全額会社負担」とは言えず、従業員の意思によって実質的に自己負担が生じる場合もあるのです。
また、会社がどの程度の掛金を出すかは制度設計によって異なります。全従業員一律で同額を出す企業もあれば、勤続年数や役職に応じて差をつける企業もあります。
法律で定められた上限額は、他の企業年金がある場合で月額2万7500円、企業型DCのみの場合で月額5万5000円となっており、その範囲で会社が決定します。
結論として、企業型確定拠出年金は基本的に会社負担であり、従業員は自己資金を出さずに老後資金を積み立てることができます。ただし、マッチング拠出や選択制を導入している企業では従業員の負担も発生する場合があり、制度内容によって「どこまでが会社負担か」が変わるのが実際のところです。そのため、自分の勤務先で導入されている企業型DCがどの方式なのかを理解しておくことが重要です。