企業型確定拠出年金(企業型DC)の良い点は、会社と従業員の双方にとって大きなメリットがあることです。まず、従業員の立場から見れば、会社が毎月掛金を拠出してくれるため、自分で積み立ての原資を準備しなくても退職金や老後資金を確実に積み上げられる点が魅力です。
さらに、その掛金は給与扱いにはならず、所得税や住民税、社会保険料の対象外で積み立てられるため、節税効果を享受しながら資産形成を進められる仕組みになっています。
加えて、運用で得られた利益も非課税で再投資され、受け取るときには退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、税制上非常に優遇されています。つまり、積立時・運用時・受取時の三段階で税制メリットを得られる点が、企業型DCの大きな強みです。
また、長期的に積み立てることで複利効果を最大限に活かせるのも良さの一つです。現役時代に少しずつでも積み立てを続ければ、数十年単位の運用で大きな資産形成につながります。
自分で投資信託や定期預金など運用商品を選択できるため、リスクを抑えたい人は安全資産を、増やしたい人は投資性向の強い商品を選ぶなど、ライフプランや投資スタイルに応じた運用が可能です。近年では投資教育に力を入れる企業も増えており、運用の知識を身につけられる点も副次的なメリットといえるでしょう。
一方、企業側にとってもメリットは大きいです。従業員に対して「退職金制度を用意している」というメッセージを発信できるため、人材採用や定着の面で有利になります。
従来型の退職金制度や確定給付型年金では将来の支給額を約束する必要があり、企業の財務負担が読みにくいという課題がありました。これに対して企業型DCは「掛金を拠出すればその時点で企業の責任は完了」するため、退職給付債務を抱える必要がなく、財務リスクを抑制できます。
中小企業にとっては福利厚生を整える手段として導入しやすい仕組みであり、従業員満足度の向上にもつながります。
総じて、企業型確定拠出年金の良い点は「税制メリットを享受しながら老後資金を効率的に準備できること」「会社が拠出してくれるため従業員の負担が軽いこと」「企業にとっても財務リスクを抑えつつ人材戦略に役立つこと」にあります。老後資金不足が社会問題となる中で、企業型DCは従業員の生活安定と企業の経営安定を同時に実現できる優れた制度といえるでしょう。