企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が従業員のために掛金を拠出し、従業員自身が運用を行って老後に受け取る年金制度です。では、この制度は必ず加入しなければならないのかというと、答えは「制度の設計による」となります。
まず、会社が企業型DCを導入している場合、多くは「原則として全員加入」が基本となります。企業が掛金を拠出し、それが従業員一人ひとりの専用口座に積み立てられていく仕組みのため、本人が希望しなくても制度上加入者となるケースが一般的です。
この場合は入らないという選択肢はなく、自動的に掛金が拠出され、従業員は運用先を選ぶ義務だけが発生します。もし運用商品を選ばずに放置した場合には、初期設定の元本確保型商品などに自動的に割り当てられることになります。
一方で、企業によっては「選択制確定拠出年金(選択制DC)」を導入している場合があります。これは給与の一部を現金で受け取るか、掛金として積み立てるかを選べる仕組みです。
この場合には加入は任意であり、従業員が「現金受け取り」を選択すれば企業型DCに入らなくても済みます。ただし、その分老後資金形成の機会や税制優遇を受けるメリットを手放すことになります。
入らない選択をした場合のデメリットとして、まず税制上の優遇措置を享受できなくなる点があります。企業型DCの掛金は全額非課税で積み立てられ、運用益も非課税、受け取り時も退職所得控除や公的年金等控除が適用されるという強いメリットがあります。
これを利用しない場合、老後資金形成において税制面での不利が生じることは避けられません。また、会社が掛金を用意してくれているのに加入しない場合は、将来的な退職金制度を活用できず、他の従業員との差が生まれる可能性もあります。
ただし、短期間で退職する予定がある人や、運用リスクをどうしても取りたくない人にとっては、加入しない選択を検討する余地があるともいえます。とはいえ、長期的に見れば税制メリットと複利効果は非常に大きく、資産形成の手段として魅力的です。そのため、多くの専門家は「制度が用意されているなら基本的には加入した方が得策」と考えています。
結論として、企業型確定拠出年金は会社の制度設計によって「必ず加入」「選択制で任意加入」が分かれます。
もし選択制であれば入らなくても構いませんが、老後資金や節税という観点から考えると、加入しないことは大きな機会損失になり得ます。したがって、自分のライフプランや資産形成の考え方を踏まえたうえで、制度を有効に活用することが望ましいといえるでしょう。