確定拠出年金にすると退職金はもらえない？制度の仕組みと受け取り方法を解説

この記事は、確定拠出年金（企業型DCやiDeCo）を導入している企業に勤めている方や、これから転職・就職を考えている方、また人事・経営者の方に向けて書かれています。 「確定拠出年金にすると退職金がもらえないのでは？」という不安や疑問を持つ方に対し、制度の仕組みや受け取り方法、従来型退職金との違い、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。 退職金制度の選択や将来設計の参考にしてください。

確定拠出年金と退職金の関係

確定拠出年金（DC）は、従来の退職金制度と並ぶ、または代替する形で導入されることが多い制度です。 企業が毎月一定額を従業員の年金口座に拠出し、その資産を従業員自身が運用していく仕組みです。 従来の「退職時にまとまった金額を受け取る退職金」とは異なり、確定拠出年金は原則として60歳以降に受け取ることになります。 そのため、「退職金がもらえない」と誤解されがちですが、実際には退職金制度の一形態として機能しています。

確定拠出年金は「退職金制度の一形態」

確定拠出年金は、企業が従業員の老後資金を準備するための退職給付制度の一つです。 従来の退職一時金や確定給付企業年金（DB）と同様に、企業が掛金を拠出する点は共通しています。 ただし、運用リスクや将来の受取額は従業員自身が負う点が特徴です。 退職金の「もらい方」が変わるだけで、企業が退職金の代わりに確定拠出年金を導入している場合も多く、退職金制度の一形態と考えて問題ありません。

• 企業が掛金を拠出する
• 従業員が運用を選択する
• 老後資金として受け取る

従来の退職金に代わる場合と上乗せの場合がある

確定拠出年金は、企業によって「従来の退職金制度を廃止してDCに一本化するケース」と、「従来の退職金に加えてDCを上乗せするケース」があります。 どちらのパターンかは会社の就業規則や退職金規程で確認できます。 上乗せ型の場合は、従来の退職金とDCの両方を受け取れるため、より手厚い老後資金準備が可能です。 一方、代替型の場合は、退職時にまとまった現金が出ないため、誤解が生じやすい点に注意が必要です。

制度形態	特徴
代替型	従来の退職金を廃止しDCに一本化
上乗せ型	従来の退職金＋DCの両方を支給

会社の制度設計によって異なる

確定拠出年金と退職金の関係は、企業ごとの制度設計によって大きく異なります。 同じ業界や規模の会社でも、退職金制度の有無や内容、DCの導入状況はさまざまです。 自分の会社がどのような制度を採用しているかは、就業規則や人事部への確認が必要です。 また、勤続年数や退職理由によっても受給資格や金額が変わる場合があるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

• 会社ごとに制度が異なる
• 就業規則や退職金規程を確認
• 人事部に問い合わせるのも有効

なぜ「退職金がもらえない」と思われるのか

確定拠出年金が導入されている企業で「退職金がもらえない」と感じる方が多いのは、従来の退職金制度と仕組みや受け取りタイミングが大きく異なるためです。 特に、退職時に現金でまとまった金額を受け取れないことや、途中で資産を引き出せない点が誤解の原因となっています。 また、制度の内容が十分に説明されていない場合も、不安や誤解を生みやすい要因です。

確定拠出年金は途中で現金化できない

確定拠出年金は、原則として60歳になるまで資産を現金化して引き出すことができません。 そのため、退職時に「退職金」としてまとまったお金を受け取ることができず、「退職金がもらえない」と感じる方が多いのです。 ただし、法令で定められた特別な事情（障害状態や一定の要件を満たす場合）を除き、途中引き出しはできません。 この点が従来の退職金制度との大きな違いです。

• 60歳まで原則引き出し不可
• 特別な事情がない限り現金化できない
• 退職時に現金を受け取れない

受け取れるのは60歳以降

確定拠出年金の資産は、原則として60歳以降にならないと受け取ることができません。 そのため、定年より前に退職した場合や、転職した場合でも、すぐに現金化できない点が従来の退職金と大きく異なります。 この「受け取りタイミングの違い」が、退職金がもらえないと誤解される大きな理由の一つです。 ただし、60歳以降に一時金や年金形式で受け取ることが可能です。

制度	受け取り時期
従来型退職金	退職時
確定拠出年金	60歳以降

従来の「退職時にまとめて受け取る退職金」と仕組みが違う

従来の退職金制度では、退職時に会社からまとまった金額が一括で支給されるのが一般的でした。 一方、確定拠出年金は、会社が拠出した掛金を従業員が自分で運用し、60歳以降に受け取る仕組みです。 このため、退職時に現金を受け取れないことから「退職金がもらえない」と感じる方が多いのです。 しかし、実際には老後資金としてしっかり受け取れる制度です。

• 従来型は退職時に一括支給
• DCは60歳以降に受給
• 運用次第で受取額が変動

確定拠出年金の受け取り方法

確定拠出年金の受け取り方法には大きく分けて「一時金」と「年金形式」の2種類があります。 どちらの方法を選ぶかによって、税制上の優遇や手取り額が変わるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。 また、受け取り開始年齢は原則60歳以降となっており、受け取り方法は自分のライフプランや資金ニーズに合わせて選択できます。 ここでは、それぞれの受け取り方法について詳しく解説します。

老齢給付金として60歳以降に受給

確定拠出年金の基本的な受け取り方は、60歳以降に「老齢給付金」として受給する方法です。 60歳に到達した時点で、積み立てた資産を一時金または年金形式で受け取ることができます。 受給開始年齢は、加入期間によって60歳から65歳までの間で変動します。 この老齢給付金は、老後の生活資金として活用できるため、退職後の安心につながります。

• 60歳以降に受給開始
• 一時金・年金形式を選択可能
• 老後資金として活用

一時金（退職金扱い）での受け取り

確定拠出年金の資産を一括で受け取る「一時金方式」は、従来の退職金と同じようにまとまった金額を手にすることができます。 この場合、受け取った金額は「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されるため、税制上のメリットがあります。 一時金での受け取りは、住宅ローンの返済や大きな支出がある場合に有効です。 ただし、受け取り時期や金額によっては税金が発生する場合もあるため、注意が必要です。

受け取り方法	税制上の扱い
一時金	退職所得控除が適用

年金形式で分割して受け取る方法もある

確定拠出年金は、年金形式で分割して受け取ることも可能です。 この場合、受け取る金額は「公的年金等控除」の対象となり、一定額まで非課税または軽減されます。 年金形式で受け取ることで、長期間にわたり安定した収入を得ることができ、老後の生活設計がしやすくなります。 一時金と年金形式を組み合わせて受け取ることもできるため、自分のライフプランに合わせて柔軟に選択しましょう。

• 年金形式で分割受給が可能
• 公的年金等控除の対象
• 一時金との併用も可能

従業員にとってのメリット

確定拠出年金は、従業員にとって多くのメリットがあります。 最大の特徴は、運用益が非課税であることや、税制優遇が受けられる点です。 また、転職や退職時にも資産を持ち運べる「ポータビリティ」も大きな魅力です。 これらのメリットを活かすことで、効率的に老後資産を形成することができます。

運用益が非課税で老後資産を育てられる

確定拠出年金では、運用によって得られた利益（運用益）が非課税となります。 通常、投資信託や株式などの運用益には20％以上の税金がかかりますが、確定拠出年金ではこれがかかりません。 そのため、長期間にわたり効率的に資産を増やすことができ、老後資金の形成に大きく貢献します。

• 運用益が非課税
• 長期運用で資産が増えやすい
• 老後資金の準備に最適

退職所得控除・年金控除で税制優遇がある

確定拠出年金の受け取り時には、税制上の優遇措置が受けられます。 一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、税負担が大きく軽減されます。 これにより、手取り額が増え、老後の生活資金を効率的に確保できます。 受け取り方法によって控除額や税金が異なるため、事前にシミュレーションしておくと安心です。

受け取り方法	適用される控除
一時金	退職所得控除
年金形式	公的年金等控除

転職・退職時も資産を持ち運べる（ポータビリティ）

確定拠出年金は、転職や退職をしても自分の年金資産を持ち運ぶことができます。 これを「ポータビリティ」と呼び、転職先の企業型DCや個人型DC（iDeCo）に資産を移換することが可能です。 従来の退職金制度では、転職時に退職金がリセットされることもありましたが、DCなら継続して資産を運用できるため、キャリアの多様化にも対応しやすい制度です。

• 転職・退職時も資産を移換可能
• キャリアの多様化に対応
• 資産を継続して運用できる

経営者にとってのメリット

確定拠出年金は、従業員だけでなく経営者にとっても多くのメリットがあります。 特に、退職給付債務の軽減や資金繰りリスクの回避、そして優れた福利厚生としての活用が挙げられます。 これらのメリットを活かすことで、企業経営の安定や人材確保・定着にもつながります。 以下で、経営者視点での主なメリットを詳しく解説します。

退職給付債務を軽減できる

確定拠出年金は、企業が毎年一定額を拠出する仕組みのため、将来の退職給付債務（退職金の支払い義務）を大幅に軽減できます。 従来の確定給付型退職金制度では、将来の退職金総額を見積もって積み立てる必要があり、業績悪化時の負担が大きくなりがちでした。 DC制度なら、拠出額が確定しているため、経営計画が立てやすくなります。

• 拠出額が毎年確定
• 将来の債務リスクを軽減
• 経営計画が立てやすい

制度を外部積立にすることで資金繰りリスクを回避

確定拠出年金は、企業が拠出した資金を外部の金融機関に積み立てるため、会社の資金繰りリスクを回避できます。 従来の退職金制度では、退職者が多い年に一度に多額の資金が必要となることがありましたが、DC制度ではその心配がありません。 また、会社が倒産した場合でも、従業員の年金資産は守られる仕組みになっています。

• 外部積立で資金繰りリスク回避
• 倒産時も従業員資産は保護
• 安定した制度運営が可能

採用・定着に有効な福利厚生になる

確定拠出年金は、従業員にとって魅力的な福利厚生の一つです。 老後資金の準備をサポートする制度として、採用活動や人材の定着率向上に寄与します。 特に若い世代や中途採用者にとって、転職時にも資産を持ち運べる点は大きな魅力です。 企業イメージの向上や、優秀な人材の確保にもつながります。

• 福利厚生として魅力的
• 採用・定着率の向上
• 企業イメージアップ

従来型退職金との違い

確定拠出年金と従来型退職金制度には、受け取り時期や制度の目的、運用方法など多くの違いがあります。 それぞれの特徴を理解することで、自分に合った資産形成や企業の制度選択がしやすくなります。 ここでは、両者の主な違いを整理して解説します。

退職一時金は退職時にまとめて支給

従来型の退職一時金制度では、退職時に会社からまとまった金額が一括で支給されます。 この金額は、勤続年数や退職理由によって決まることが多く、退職後すぐに資金が必要な場合に便利です。 一方で、受け取った後の資産運用や管理は自己責任となります。

• 退職時に一括支給
• 勤続年数で金額が決定
• 受け取り後の運用は自己責任

確定拠出年金は60歳以降に受給

確定拠出年金は、原則として60歳以降に受給が開始されます。 退職時に現金を受け取ることはできませんが、長期的な老後資金の準備に特化した制度です。 運用次第で受取額が増減するため、資産形成の意識が高まります。

制度	受け取り時期
退職一時金	退職時
確定拠出年金	60歳以降

制度の目的が「老後資金準備」に重点化されている

従来型退職金は、退職後の生活資金や住宅購入など幅広い用途に使われてきました。 一方、確定拠出年金は「老後資金の準備」に特化した制度設計となっています。 そのため、途中での引き出しができず、長期的な資産形成を促す仕組みです。 この違いを理解して、自分のライフプランに合った制度を選ぶことが重要です。

• 従来型は幅広い用途
• DCは老後資金に特化
• 長期運用を前提とした設計

まとめ：確定拠出年金＝退職金がもらえないわけではない

確定拠出年金は、退職金が「もらえない」制度ではなく、退職金制度の一形態として導入されています。 受け取りタイミングや仕組みが従来型と異なるだけで、老後資金としてしっかり受け取ることができます。 制度の特徴を理解し、自分や会社に合った活用方法を選ぶことが大切です。

退職金制度の一形態として導入される

確定拠出年金は、企業が従業員の老後資金を準備するための退職金制度の一つです。 従来型退職金と同様に、企業が掛金を拠出し、従業員の将来をサポートします。 「退職金がもらえない」と誤解せず、制度の内容をしっかり確認しましょう。

受け取りタイミングが変わるだけ

確定拠出年金は、退職時ではなく60歳以降に受け取る仕組みです。 受け取り方法や税制優遇を活用し、老後資金を効率的に準備できます。 タイミングの違いを理解して、将来設計に役立てましょう。

制度理解が従業員の安心と経営判断につながる

確定拠出年金の仕組みやメリット・デメリットを正しく理解することで、従業員は安心して将来設計ができ、経営者は最適な制度選択が可能になります。 不安や誤解を解消し、制度を有効に活用しましょう。