経営者が選ぶべき退職金制度は?中退共より企業型確定拠出年金が有利な理由

この記事は、中小企業の経営者や人事担当者の方に向けて、従業員の退職金制度として「中退共」と「企業型確定拠出年金(企業型DC)」の違いや特徴、どちらを選ぶべきかをわかりやすく解説します。
それぞれの制度のメリット・デメリットや、実際の導入時に考慮すべきポイントを比較し、経営戦略として最適な選択肢を提案します。
退職金制度の見直しや新規導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

  1. 中退共と企業型確定拠出年金の違い
    1. 中退共=国が運営する退職金共済制度
    2. 企業型DC=企業が掛金を拠出し従業員が運用
    3. どちらも掛金は損金算入できる
  2. 中退共のメリット・デメリット
    1. 国の制度で安心感がある
    2. 掛金は月額5,000円からと導入しやすい
    3. しかし利回りが低く、転職時の持ち運びが不便
  3. 企業型確定拠出年金(DC)のメリット・デメリット
    1. 掛金全額が損金算入でき税制優遇が大きい
    2. 従業員が自ら運用し老後資産を育てられる
    3. 制度設計やランニングコストの負担がある
  4. なぜ企業型DCの方が有利なのか
    1. 従業員が転職・退職しても資産を持ち運べる
    2. 投資信託など成長資産で運用できる
    3. 採用・定着の福利厚生として強力な武器
  5. 経営者が考えるべき判断ポイント
    1. 長期的な従業員定着を重視するか
    2. 資金繰りとランニングコストに耐えられるか
    3. 自社の人材戦略にどちらが合うか
  6. 中小企業における選択肢
    1. 従業員規模が小さいなら企業型DCの少人数プランもある
    2. 中退共と組み合わせて併用するケースもある
    3. iDeCo+を導入して従業員負担を軽減する方法もある
  7. まとめ:中退共より企業型DCの方が将来性がある
    1. 中退共は手軽だが利回り・ポータビリティに弱点
    2. 企業型DCは老後資産形成に強く採用・定着にも効果的
    3. 経営戦略としては企業型DC導入を検討する価値が高い

中退共と企業型確定拠出年金の違い

中退共(中小企業退職金共済)と企業型確定拠出年金(企業型DC)は、どちらも企業が従業員のために用意する退職金制度ですが、その仕組みや運用方法に大きな違いがあります。
中退共は国が運営する共済制度で、主に中小企業向けに設計されています。
一方、企業型DCは企業が掛金を拠出し、従業員が自ら運用する年金制度です。
どちらも掛金は損金算入できるため、税制上のメリットがありますが、資産の運用方法や転職時の対応、将来の受取額などに違いがあるため、企業のニーズや従業員の働き方に合わせて選択することが重要です。

項目 中退共 企業型DC
運営主体 国(独立行政法人) 企業
運用方法 国が一括運用 従業員が自ら運用
掛金上限 月額30,000円 月額55,000円
転職時の持ち運び 原則不可 可能

中退共=国が運営する退職金共済制度

中退共は、国(独立行政法人)が運営する中小企業向けの退職金共済制度です。
企業が毎月一定額の掛金を納付し、従業員が退職した際に掛金納付月数に応じた退職金が支給されます。
制度の運営や管理は国が行うため、信頼性や安心感が高いのが特徴です。
また、加入や手続きが比較的簡単で、導入のハードルが低いことから、多くの中小企業で利用されています。
ただし、運用は国が一括で行うため、利回りは限定的です。

  • 国が運営するため安心感がある
  • 中小企業向けに設計されている
  • 掛金納付月数に応じて退職金が支給される

企業型DC=企業が掛金を拠出し従業員が運用

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が従業員のために毎月掛金を拠出し、その資金を従業員自身が投資信託や定期預金などで運用する制度です。
運用成果によって将来受け取る年金額が変動するため、従業員の資産形成意識を高める効果も期待できます。
また、転職や退職時には資産を他の年金制度へ移換できる「ポータビリティ」があり、現代の多様な働き方に対応しやすいのが特徴です。
企業側は制度設計や運用管理の手間がかかりますが、従業員の老後資産形成を支援できる先進的な制度です。

  • 企業が掛金を拠出
  • 従業員が自ら運用先を選択
  • 運用成果によって将来の受取額が変動
  • 転職時に資産を持ち運べる

どちらも掛金は損金算入できる

中退共も企業型DCも、企業が拠出する掛金は全額損金算入が可能です。
これにより、法人税の節税効果が期待でき、企業にとっては大きなメリットとなります。
また、従業員にとっても、受取時まで課税が繰り延べられるため、効率的な資産形成が可能です。
ただし、制度ごとに掛金の上限や運用方法、受取時の課税方法などが異なるため、導入前にしっかりと比較検討することが重要です。

項目 中退共 企業型DC
掛金の損金算入 全額可能 全額可能
従業員の課税タイミング 受取時 受取時

中退共のメリット・デメリット

中退共は導入のしやすさや国の制度による安心感が魅力ですが、利回りや転職時の資産移換のしにくさなど、いくつかのデメリットも存在します。
ここでは、中退共のメリットとデメリットを詳しく解説します。
自社の状況や従業員の働き方に合った制度選びの参考にしてください。

国の制度で安心感がある

中退共は国が運営する制度であり、倒産リスクや運用破綻の心配がほとんどありません。
そのため、経営者や従業員にとって「退職金が確実に支給される」という安心感があります。
また、制度の運用や管理は国が一括して行うため、企業側の事務負担も比較的少なく、初めて退職金制度を導入する中小企業にも適しています。
このような信頼性の高さは、従業員の安心感や企業の信用力向上にもつながります。

  • 国が運営するため倒産リスクがない
  • 制度の信頼性が高い
  • 事務手続きが簡単

掛金は月額5,000円からと導入しやすい

中退共の掛金は月額5,000円から設定でき、最大でも30,000円までと幅広い選択肢があります。
少額から始められるため、資金繰りに余裕のない中小企業でも無理なく導入できるのが大きなメリットです。
また、従業員ごとに掛金額を設定できるため、役職や勤続年数に応じた柔軟な運用も可能です。
この手軽さが、多くの中小企業で中退共が選ばれている理由の一つです。

  • 月額5,000円から導入可能
  • 従業員ごとに掛金設定ができる
  • 資金繰りに合わせて調整しやすい

しかし利回りが低く、転職時の持ち運びが不便

中退共の最大のデメリットは、運用利回りが低い点です。
国が安全重視で運用しているため、長期的に見ても大きな資産増加は期待できません。
また、従業員が転職した場合、原則として中退共の資産を他の退職金制度へ移換することができず、持ち運びが不便です。
このため、転職が多い業界や若い従業員が多い企業では、従業員の資産形成や福利厚生の観点からデメリットとなる場合があります。

  • 利回りが低い
  • 転職時に資産移換ができない
  • 長期的な資産形成には不向き

企業型確定拠出年金(DC)のメリット・デメリット

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、従業員の資産形成を支援できる先進的な制度ですが、導入や運用には一定のコストや手間もかかります。
ここでは、企業型DCのメリットとデメリットを詳しく解説します。
自社の人材戦略や経営方針に合った制度選びの参考にしてください。

掛金全額が損金算入でき税制優遇が大きい

企業型DCの最大のメリットは、企業が拠出する掛金が全額損金算入できる点です。
これにより、法人税の節税効果が大きく、企業にとっては財務面でのメリットがあります。
また、従業員側も受取時まで課税が繰り延べられるため、効率的な資産形成が可能です。
税制優遇の大きさは、企業型DCを導入する大きな動機となっています。

  • 掛金全額が損金算入可能
  • 法人税の節税効果が大きい
  • 従業員も課税繰延で資産形成しやすい

従業員が自ら運用し老後資産を育てられる

企業型DCでは、従業員が自ら運用商品(投資信託や定期預金など)を選択し、資産を増やすことができます。
運用成果によって将来の受取額が変動するため、従業員の資産形成意識が高まり、老後の備えとしても有効です。
また、金融リテラシーの向上や、従業員の自立した資産運用を促す効果も期待できます。
このような特徴は、従業員の満足度や定着率向上にもつながります。

  • 従業員が運用先を選べる
  • 運用成果で資産が増える可能性
  • 金融リテラシー向上にも寄与

制度設計やランニングコストの負担がある

企業型DCは、導入時の制度設計や運用管理に手間とコストがかかる点がデメリットです。
金融機関との契約や従業員への説明、運用商品の選定など、企業側の負担が増えることがあります。
また、毎年の管理費用や事務手続きも発生するため、資金繰りや人員体制に余裕がない企業にはハードルが高い場合もあります。
導入前にコストと効果をしっかり見極めることが重要です。

  • 導入・運用に手間がかかる
  • 管理費用や事務負担が発生
  • 小規模企業には負担が大きい場合も

なぜ企業型DCの方が有利なのか

近年、企業型DCが中退共よりも有利とされる理由は、従業員の多様な働き方や資産形成ニーズに柔軟に対応できる点にあります。
転職時の資産移換や運用商品の選択肢、福利厚生としての魅力など、企業型DCならではの強みを解説します。

従業員が転職・退職しても資産を持ち運べる

企業型DCの大きな特徴は、従業員が転職や退職をした場合でも、積み立てた資産を他の確定拠出年金制度やiDeCo(個人型確定拠出年金)へ移換できる「ポータビリティ」があることです。
これにより、従業員はキャリアの変化に合わせて老後資産を一貫して管理でき、資産形成の継続性が保たれます。
現代のように転職が一般的になった社会では、この柔軟性は大きな魅力となり、従業員の安心感や満足度向上にもつながります。

  • 転職・退職時に資産を他制度へ移換可能
  • 資産形成の継続性が高い
  • 従業員のライフプランに柔軟に対応

投資信託など成長資産で運用できる

企業型DCでは、従業員が投資信託や定期預金、保険商品など多様な運用商品から選択して資産を運用できます。
特に投資信託を活用すれば、長期的な資産成長が期待でき、インフレリスクにも備えやすくなります。
従業員の金融リテラシー向上にもつながり、将来の資産形成に対する意識が高まる点も大きなメリットです。
運用成果によっては、従来の退職金制度よりも多くの資産を築ける可能性があります。

  • 多様な運用商品から選択可能
  • 長期的な資産成長が期待できる
  • インフレ対策にも有効

採用・定着の福利厚生として強力な武器

企業型DCは、従業員の資産形成を支援する先進的な福利厚生制度として、採用や人材定着の面でも大きな効果を発揮します。
特に若い世代や中途採用者にとって、転職時の資産移換や自分で運用できる柔軟性は大きな魅力です。
企業のイメージアップや従業員満足度の向上にもつながり、優秀な人材の確保・定着を目指す企業にとっては強力な武器となります。

  • 福利厚生の充実で採用力アップ
  • 従業員の定着率向上
  • 企業イメージの向上

経営者が考えるべき判断ポイント

中退共と企業型DCのどちらを選ぶかは、企業の経営戦略や人材方針によって異なります。
ここでは、経営者が制度選択時に重視すべきポイントを解説します。
自社の現状や将来ビジョンに合わせて、最適な退職金制度を選びましょう。

長期的な従業員定着を重視するか

従業員の長期的な定着やモチベーション向上を重視する場合、企業型DCの導入は非常に有効です。
資産の持ち運びや運用の自由度が高いため、従業員の満足度やロイヤリティ向上につながります。
一方、中退共は手軽さや安心感が強みですが、転職が多い業界ではデメリットも大きくなります。
自社の人材戦略に合わせて、どちらがより従業員の定着に寄与するかを検討しましょう。

  • 従業員の定着率を重視するか
  • 転職が多い業界かどうか
  • 従業員の満足度向上を目指すか

資金繰りとランニングコストに耐えられるか

企業型DCは導入や運用に一定のコストがかかるため、資金繰りや経営体力に余裕があるかを確認する必要があります。
中退共は少額から始められ、事務負担も少ないため、コスト面でのハードルは低めです。
自社の財務状況や今後の事業計画を踏まえ、無理のない範囲で制度を選択することが重要です。

  • 導入・運用コストの把握
  • 資金繰りへの影響
  • 長期的な負担に耐えられるか

自社の人材戦略にどちらが合うか

自社の人材戦略や従業員の属性に応じて、最適な退職金制度は異なります。
安定志向の従業員が多い場合は中退共、成長志向や転職が多い場合は企業型DCが適していることが多いです。
また、両制度を併用することで、幅広いニーズに対応することも可能です。
自社のビジョンや人材育成方針に合った制度を選びましょう。

  • 従業員の属性や志向
  • 人材育成方針
  • 併用の可能性も検討

中小企業における選択肢

中小企業でも、退職金制度の選択肢は多様化しています。
企業型DCの少人数プランや中退共との併用、iDeCo+の活用など、企業規模や従業員数に応じた柔軟な制度設計が可能です。
ここでは、中小企業が選べる具体的な選択肢を紹介します。

従業員規模が小さいなら企業型DCの少人数プランもある

従業員数が少ない中小企業でも、企業型DCの「少人数特例プラン」を活用することで、手軽に確定拠出年金制度を導入できます。
このプランは、従業員数が100人以下の企業を対象に、導入手続きや運用管理の負担を軽減した設計となっています。
少人数でも大企業と同じような福利厚生を提供できるため、採用力や従業員満足度の向上に役立ちます。
また、経営者自身も加入できる点が魅力です。

  • 従業員数100人以下でも導入可能
  • 手続きや管理の負担が軽い
  • 経営者も加入できる

中退共と組み合わせて併用するケースもある

中退共と企業型DCは、併用することも可能です。
例えば、長期勤続者には中退共、若手や転職が多い層には企業型DCを適用するなど、従業員の属性やニーズに応じて柔軟に設計できます。
併用することで、安定性と成長性の両方をカバーでき、幅広い人材に対応した福利厚生制度を実現できます。
企業の成長段階や人材戦略に合わせて、最適な組み合わせを検討しましょう。

  • 中退共と企業型DCの併用が可能
  • 従業員の属性に応じて使い分け
  • 安定性と成長性を両立

iDeCo+を導入して従業員負担を軽減する方法もある

iDeCo+(イデコプラス)は、企業が従業員のiDeCo掛金の一部を補助できる制度です。
中小企業が導入しやすい仕組みで、従業員の老後資産形成をサポートしつつ、企業の負担も抑えられます。
企業型DCや中退共と組み合わせて活用することで、より柔軟で多様な退職金制度を構築できます。
従業員の自助努力を促しながら、企業としても福利厚生の充実を図ることが可能です。

  • 企業がiDeCo掛金を補助できる
  • 中小企業でも導入しやすい
  • 他制度と組み合わせて活用可能

まとめ:中退共より企業型DCの方が将来性がある

中退共と企業型DCはどちらも中小企業の退職金制度として有効ですが、将来性や柔軟性の面では企業型DCが優れています。
従業員の多様な働き方や資産形成ニーズに対応できる点が、今後ますます重要になるでしょう。
経営者は自社の人材戦略や財務状況を踏まえ、最適な制度を選択することが求められます。

中退共は手軽だが利回り・ポータビリティに弱点

中退共は導入の手軽さや国の制度による安心感が魅力ですが、利回りの低さや転職時の資産移換ができない点がデメリットです。
安定志向の従業員が多い企業には適していますが、現代の多様な働き方にはやや不向きな面もあります。
今後の人材流動化を考えると、ポータビリティの弱さは大きな課題となるでしょう。

  • 導入が簡単で安心感がある
  • 利回りが低い
  • 転職時の資産移換ができない

企業型DCは老後資産形成に強く採用・定着にも効果的

企業型DCは、従業員が自ら運用できるため老後資産形成に強く、転職時の資産移換も可能です。
福利厚生としての魅力が高く、採用力や従業員定着率の向上にもつながります。
将来の人材確保や企業の成長を見据えるなら、企業型DCの導入は非常に有効な選択肢です。

  • 老後資産形成に強い
  • 転職時の資産移換が可能
  • 採用・定着に効果的

経営戦略としては企業型DC導入を検討する価値が高い

今後の人材確保や企業の成長を考えると、企業型DCの導入は経営戦略上大きな価値があります。
従業員の多様なニーズに応え、企業の魅力を高めるためにも、企業型DCの導入を積極的に検討しましょう。
中退共との併用やiDeCo+の活用も視野に入れ、最適な退職金制度を構築することが、これからの中小企業経営には求められます。

  • 経営戦略としての価値が高い
  • 多様な人材ニーズに対応
  • 併用やiDeCo+も活用可能
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